カエルのメス、種の垣根を超えた禁断の愛を求める(米研究)
JAH/iStock
異種間による交雑は、一般的に動物の生殖には有害なものだと考えられている。しかし、あるカエルのメスは、そんな禁断の愛を巧みに利用する方法を知っているのだそうだ。
どうにかして子孫を残そうとする動物たちは、必ずしも選り好みをするわけではない。異種同士であってもいちゃつく野生動物の写真はたくさん撮影されている。
それでも、異性のタイプはやはり自分の同族というのが普通だ。同じ種の配偶者が見つけられないような状況では交雑することもあるが、好みまでが異種の異性ということは滅多にない。
ところがだ!一部のカエルのメスはあえて異種のオスを選ぶことがあるのだという。
・あえて異種のオスと交配するあるアシガエル科のメス
カナダ南西からアメリカ中西部グレートプレーンズにかけて分布するトウブスキアシガエル科の「プレーンズ・スペードフット・トード(学名 Spea bombifrons)」のメスは、ときに、「メキシカン・スペードフット・トード(学名 S. multiplicata)」のオスと交雑する。
この禁断の愛で生まれた子供のオスは、子孫を残すことができない。しかし、メスならば、同種同士の子供より産める数は少なくなるが、それでもきちんと卵を産むことができる
これは、交雑の欠点を示すはっきりとした事例で、同種の交配相手が見つからない状況でのみ行われる行為のように見える。
だが、ノースカロライナ大学(アメリカ)の研究グループによれば、プレーンズ・トードのメスはときにあえて異種のオスを選ぶのだという。

画像左がプレーンズ・スペードフット・トードのメス / David Pfennig
・異種のオスに心ときめいてしまう理由とは?
これはメキシカン・トードのオスが、思わず見惚れる超絶美形カエルであるからではない。じつは雑種のオタマジャクシが純血種よりも早く大人に変形できることが理由だ。
すぐに乾いてしまう水場で生きるメスは、究極の選択をしなければならない。1つは、同種のオスと交配して純血の子供を残すが、代償としてオタマジャクシが全滅する可能性が高いという選択肢。
もう1つは、子供が雑種で繁殖能力は劣るが、オタマジャクシが全滅する可能性は低いという選択肢だ。
どちらも苦渋の選択だ。だが、後者なら、子がさらに孫を作れる可能性は高い。こうしたわけで、水場が長くはもたないだろうと感じたプレーンズ・トードのメスには、メキシカン・トードのオスがやたらと魅力的に思えてくる。

カエル界のイケメン?メキシカン・トードのオスwikimedia commons
・ゆっくりとしたパルスの甘い歌声に酔いしれる
だが、メキシカン・トードのオスは、プレーンズ・トードのオスとそれほど似ていないし、より重要なことに鳴き声が違う。そんなオスと作った子供は本当に無事に育つのだろうか?
実験の結果明らかになったのは、子供の適応度を一番よく予測できるのは、異種の父親の鳴き声のパルスであるということだ。
鳴き声のパルスがゆっくりとしたメキシカン・トードのオスとの間でできた子供ほど、成長が早く、水場が干上がってしまう前にそこから脱出できる可能性が高まるのだという。
だがメスが異種を選ぶのは、浅い水溜りで暮らしているときのみで、干上がる心配のない深い池で暮らしているときは、いかにメキシカン・トードのオスが甘い鳴き声で誘ってこようとも、無視を決め込むそうだ。

David Pfennig
・人類にとっても身近な交雑
面白いことに、メキシカン・トードのメスの恋の琴線に触れる鳴き声は、プレーンズ・トードのメスとはまた違うことも分かっている。
彼女たちにとって魅力的に聞こえるのは、パルスではなく、一定時間の間にあげられる鳴き声の回数であるそうだ。研究グループによれば、たくさん鳴き声をあげられるオスは、それだけ体力があり、健康であることを示しているからと考えられるそうだ。
ちなみにネアンデルタール人やデニソワ人といった初期人類の交雑も、私たち自身の進化を形作っている。じつは交雑は意外なほど私たちにとって身近なものなのだ。
この研究は『Science』(3月20日付)に掲載された。
(追記)2020/03/28:本文を一部修正して再送します。
References:iflscience/ written by hiroching / edited by parumo