緊急事態宣言により緊張が高まる中、不安症をかかえる人々が不安を乗り越えるための専門家のアドバイス
ついに日本でも7都府県に緊急事態宣言が発表された。海外の都市閉鎖ような強制力のあるものではないが、不要不急の外出や、社会的距離の実行(3密の回避)などが強化された形である。
とは言え、非常事態であることは確かだ。海外では先の見えない厳しい状況に葛藤する人々も増加しており、特にメンタルヘルスに問題を抱えている人にとっては毎日がより辛いものとなっている。
普段から心配性だったり、不安障害や恐怖症を抱えている人たちが、今以上に苦しまないようにするためにはどうすればいいのか?
海外の専門家らによるアドバイスを参考にしてみよう。
・不安障害を抱えている人は想像上の脅威の真っ只中にいる
不安障害やパニック障害、恐怖症などの不安症を抱えている人は、これまでも自宅に留まることは安全を保つベストな方法であり、それを常に実行して来たことだろう。
しかし予期していなかったのは、彼らにとって未曽有の脅威に対する恐怖と直面するだけでなく、普段は気丈な人が恐怖を感じている様子を目の当たりにしていることだ。
不安症の人たちは、それを見ることで、更に精神的に衰弱してしまう結果となるようだ。
更にこのパンデミック後、世界がどのようになってしまうのか?不安症を持つ人は、常に心に抱えていた最悪の事態、終末論的なシナリオが起きることにおびえて過ごしている人も多いだろう。
ワシントンのホイットマン大学で、不安に関する障害および恐怖症を専門とする心理学者トム・アームストロング教授は、このように述べている。
パンデミックの真っ只中にいなくても、不安症を抱えるほとんどの人は、「もし...」という脅威に過度の恐怖を抱えており、合理的に物事を判断できなくなっていきます。
そして今、ありえないと思われた恐怖が現実に起きているわけで、「思った通り。悪い予感が的中している」更に恐怖を抱くわけです。
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・様々な不安症の人々が持つ不確実性に対する不寛容さ
分離不安障害(愛着のある人物や場所から離れることに対し不安を感じる)を抱えている人は、社会的距離の実行により悪夢のような孤独に襲われている可能性があるという。
OCD(強迫性障害)や潔癖症といった疾患を抱えている人は、今まさに精神的に大打撃を受けていることだろう。
不安に押しつぶされ、自己隔離中のストレスにより摂食障害を引き起こしてしまう可能性もあるかもしれない。
実は、不安障害やパニック障害を抱えていてコロナウイルスに感染している人が、無症候性であっても恐怖にがんじがらめになり呼吸困難を起こしているケースが4例に1例は報告されているという。
「不安障害に苦しむ人は、不確実性に対する不寛容さを持っている」と語るのは、ニューヨークフォーダム大学のディーン・マッケイ心理学教授だ。
パンデミックの最中、不安障害を抱える人たちは何が重要で、何が必要な情報であるか、そして何により不安が引き起こされているのかを判断することが不可能になっています。
正直、現在の状況は誰にとっても不確実性のレベルが急上昇していることでしょう。そのため、不安に虐げられている人は、かなり不確かな方法で不確実性に対処しています。
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強迫的な手洗いや社会的距離、外出自粛など公衆衛生と安全に関するガイドラインは、不安症の一般的な症状を強化し、悪化させているといえるようだ。
もともと、不安症を持つ人の中には、この状況の中より一層治療や投薬に大きく依存しているという人も多いだろう。
今まで以上に不安を感じてどうしようもないという人は、決して少なくないのだ。
そして彼らは、パンデミックが終わり元の世界になっても、再びそこに馴染むことができないのでは?という不安も同時に抱えていると専門家は話している。
それは、彼らの感じる恐怖が再び非合理とされるレベルに戻る時だ。では、今まさにその心理状態にある人たちは、どのように対応すればいいのだろうか。
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・「この状況は永遠ではなく一時的なもの」と認識する
アームストロング教授は、次のようにアドバイスを促している。
この状況は永遠に続くわけではありません。そもそも永遠に続くものなどないのです。一時的なものだと認識することが大切です。
今の状況は、パンデミック前とは異なりますが、パンデミックが終わった後も今のような状況にはなりません。
もともと不安症の人は、それが他人からの否定的な評価や判断に対する過度の恐怖により生じます。コロナウイルスが原因で、現在人の周りにいることが脅威となる理由とは無関係です。
また、別の専門家は「コロナウイルスは一種の暴露療法(患者が恐怖を抱いている物や状況に対して、危険を伴うことなく直面させる不安障害に用いられる行動療法)と考えるのもアリかもしれない」と述べている。
つまりは、この脅威は必ず終わりが来るということだ。
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・自分の殻にこもらず安全な方法を見つけることが大切
アームストロング教授は、不安症と共存している人たちにこのようにアドバイスしている。
全般性不安障害の人は、それについて悩み、心理的に痛みを伴う一方で、心配をやめないことを自身の防衛線としているところがあります。
ですが、広場恐怖症の人は、散歩が許されているのなら近場でいいから定期的に外に出てみましょう。社交不安障害の人は、ビデオチャットなどで友人や家族に連絡してみましょう。
小さなことでいいから、自分の殻にこもらず、勇気をもって自身を押し出し、安全な方法を見つけることが大切です。
また、専門家や政府指導者らが感染防止のため、恐怖を増大させるような警告を促していますが、「自分は十分にやっている」と思うことが大事です。
それらの警告は、楽観的な見方が過度に達し、「自分だけは大丈夫」と現状を真剣に受け止めていない人のためと思いましょう。
あなたは、これまでに何度も十分過ぎるほど手を洗っています。今以上の不安を引き起こさないように、20秒と言われている手洗いを20秒以上しないようにすればいいだけです。
不安症の人々は、この状況のために前々から「もしも...」と題して一生かけて準備してきました。だから今よくやっています。それを自分で認めましょう。
また、恐怖に数回直面することで、それが経験となります。物事が思うほど悪くないことを知り、恐怖を克服することが可能になります。
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・必ず終わりは訪れる。人生にも終わりがある。だからこそ今を生きよう
現在、世界のほとんどの人がOCDや不安障害、社会不安を持つ人に近い立場に立っているといえよう。おかれている状況はほとんど一緒だ。
果たして、このパンデミックが去った時、何が起こるだろうか。人々は汚染や公共空間の恐怖に対して、これまで以上に意識するようになる可能性が高く、一部の人にとってはその時が不安障害の始まりになるかもしれない。
人々は、何が安全なのか、恐怖反応の適切レベルはどうあるべきかなど、確信が持てないと感じ、不確実性は上がっていくことだろう。
そうなると、不安障害だけでなく鬱やアルコール依存症など精神疾患を抱える人の増加は大きな課題になる可能性がある。
だからこそ、今それを抱える人、不安の思考パターンに陥っている人には乗り越えようとする気持ちが大切なのだ。
パンデミックはいつか終わる。世界は必ず生き残る。この先、私たちは少なくとも隠喩的に、「目に見えない無限の驚異と闘ったのだ」と振り返ることができる時がくるだろう。
そして忘れてはならないのは、誰の人生にもいつか必ず終わりがくるということだ。どんな終わり方をするのかわからないから人は生きていられる。ならば今、自分は生きているという実感を持つことを心掛けよう。生きているうちはその人生を謳歌しよう。
References:mashable.comなど / written by Scarlet / edited by parumo