さかな芸人ハットリ「さかなクンの背中を追いかけて」麻美ゆまのあなたに会いたい!〔後編〕
先週に続いて、さかな芸人ハットリさんとの対談です。日本さかな検定一級を持っているほど魚に詳しいハットリさん。2018年には『300種類の魚を釣るまで、自分で釣って調理した魚以外食べないチャレンジ』を敢行されて、見事達成! 博識のうえ、体を張った魚ネタが面白いんですよね。そんなハットリさんは『300種類』の魚を釣るため日本全国を旅していたとき、論文レベルの“幻の魚”も釣っていたそうです。
ハットリ「石垣島の船着き場で釣りをしていたときです。300種類チャレンジもいよいよ佳境で、235種類目ぐらいでした。ここまでくると、なかなか新しい魚が釣れず、困っていたんです」
ゆま「300匹じゃなくて、300種類ですもんね。同じ種類の魚では加算されないんですよね」
ハットリ「はい。で、その船着き場で最初に釣ったのが、“ヨコスジフエダイ”。すでに釣っていた魚なので、夕飯にしようと思いました」
ゆま「横筋って響きが、なんか」
ハットリ「アハハ。で、一応釣った魚は、その場でツイッターに公開していたんですね。すると、一人のフォロワーさんから“それはヨコスジフエダイとは違うのでは?”という指摘が来たんです」
ゆま「え?」
ハットリ「僕も驚いて、すぐに魚の写真を鑑定士の方をはじめ、各方面に送りました。その結果、この魚は海外のフエダイで“ツースポットバンデッドスナッパー”と判明したんです。日本に生息記録がない、まさに幻の魚だったんです」
ゆま「すごい!」
ハットリ「この魚が釣れるなんて当然、日本初。知り合いの大学教授からは“論文レベルの発見です。すぐに標本を送ってください”と連絡が来ました」
ゆま「おおっ! ハットリさん、やりましたね!」
ハットリ「はい。自分でも“俺は持ってる”と思いました。ただ……」
ゆま「ん? 標本は、ちゃんと送りましたか?」
ハットリ「いや、その……最初に釣ったとき、僕はいつもの魚だと思ってしまったので、なんていうか、その……ムニエルにして」
ゆま「た、食べちゃったの!?」
ハットリ「はい。みんなが大騒ぎし始めた頃、幻の魚は、すでに僕の胃袋の中……」
ゆま「何やっているんですか!」
ハットリ「本当に、ごめんなさい……。知り合いの教授からは“君のやったことは魚類研究史における犯罪だ”と、きつく咎められました」
ゆま「いやあ、もったいない。ちゃんと標本を取っていれば、今頃、ものすごい大先生になってたかも」
ハットリ「そうなんです。僕の尊敬する“さかなクン”さんは、クニマスという絶滅種を山梨県の西湖で発見されています。クニマスはパッと見ただけでは判断が難しいのに、ちゃんと細かいところまでチェックして、世紀の大発見となったんです。そう考えると、やはり僕はまだまだです」
ゆま「アハハ。やっぱり“さかなクン”は意識されていますか?」
ハットリ「意識するどころか、ずっと背中を追いかけさせてもらっています」
ゆま「さかなクンみたいに、ハットリさんも頭に魚載せていますもんね。ちなみに、これはなんて魚ですか?」
ハットリ「メバルですね。おいしい魚です」
■メヒカリやサヨリがオススメ
ゆま「メバルのおいしい季節なんですね。そうだ、ハットリさんオススメの、おいしい魚を教えてくださいよ」
ハットリ「メヒカリかなぁ。メヒカリを置いている居酒屋さんがあると、テンションが上がりますね」
ゆま「メヒカリ? 知らないです」
ハットリ「意外と出してくれるお店が少ないんですよ。深海魚で小さいんですけど、脂が乗っていて、とてもおいしいですよ」
ゆま「へえー。食べたい!」
ハットリ「これからの季節だと、サヨリが旬でおいしいです」
ゆま「サヨリ?」
ハットリ「形はサンマに似ているんですけど、“春告魚”とも呼ばれる春の魚です。すごくあっさりしていて、これもおいしいです」
ゆま「あ~、食べたい。なんだかもう、お腹が空いてきちゃいましたよ(笑)。と思ったら、もうこんな時間。お魚の話だけで2時間以上、しゃべっていましたね」
ハットリ「ええ。魚の話をし始めると止まらなくて、すみません」
ゆま「いえいえ、楽しかったです。では、最後にハットリさんが、これからチャレンジしたいことを教えてください」
ハットリ「やはり“釣った魚しか食べない”企画に、また挑戦したいですね。夢としては、アマゾンでやってみたいです」
ゆま「ええ~!? それは、とんでもなく過酷なサバイバルになりそうですね」
ハットリ「はい。でも、世界中の魚を釣って食べてみたいという気持ちはあります」
ゆま「格好いいです。私もとりあえず居酒屋に行ったら、メヒカリを探して、食べてみようと思います!」
ハットリ「めちゃくちゃ、おいしいですよ~」(おわり)
さかなげいにんはっとり 1988年9月5日、神奈川県横浜市生まれ。大学時代にお笑いサークルに加入し、芸人を志す。10年に芸人として活動を開始し、幼少期より好きな魚をネタに活用した『魚名替え歌』などのネタで人気を博す。ネタの他、魚釣りのチャレンジ企画なども実施し、難関のさかな検定1級も取得。今では多くのテレビに出演するなど活躍の場を広げている。