アメリカのマスクを嫌う風潮はスペイン風邪流行時からあった。1919年に結成された反マスク同盟(サンフランシスコ)

カラパイア

アメリカのマスクを嫌う風潮はスペイン風邪流行時からあった。1919年に結成された反マスク同盟(サンフランシスコ)
アメリカのマスクを嫌う風潮はスペイン風邪流行時からあった。1919年に結成された反マスク同盟(サンフランシスコ)

スペイン風邪流行時に誕生した反マスク同盟  image by:wikimedia commons/public domain

 1919年1月、アメリカ・カリフォルニア州サンフランシスコの住民に悪い知らせがもたらされた。前年の1918年に発生したスペイン風邪の第2波が町を襲い、再びマスク着用が義務づけられたのだ。

 市民はすでにこの試練を経験済みだった。1918年10月24日、市長のジェームズ・ロルフ、衛生局のウィリアム・C・ハスラー博士ら識者が、インフルエンザが広がるのを防ぐために、外出時は必ずマスクを着用すべしというお触れを出していたからだ。

 違反すると刑務所送りとなる。1度目はマスク着用義務違反で何百人という逮捕者を出した。そして2度目、もうあんな息苦しいものをつけるのはうんざりだという市民たちが立ち上がり、反マスク同盟が誕生した。
・1918年、最初のマスク義務化

 「当初はマスクをバカにしていました」地元の赤十字社社長、ジョン・A・ブリットンは当時、『サンフランシスコ・クロニクル紙』に語っている。

こんなことを強制されたくない、自由でいたいと思っていました。でも、すぐにこれが他人の
生死を分ける問題であることを痛感することになりました

 当時アメリカでは、感染予防のためにマスクをするという対策が、突拍子もないことのように感じていた人も多かったようだ。

 市長を信じ、サンフランシスコ市民が、この難局に対処するために自発的にマスクを作り始める一方、強硬なマスク反対派もいた。

 マスクなしで公共の場に出かけた者には、5ドルの罰金が科せられたが、それでも数百人がこれに従わず、刑務所送りになった者もいた。

 クロニクル紙にもこんな記事が載った。

コロンバス・アベニューで逮捕されたジョン・ラギは、マスクの意味を考えず、こうした制約、ましてやマスクごときで刑務所にぶちこまれるなど、冗談だろうとたかをくくっていたので、マスクをつけなかったと言っている。今、彼は市の刑務所にぶちこまれている。身に染みたことだろう

 1918年11月、最悪の時期は去り、ロルフ市長がマスク着用条例解除を宣言したとき、人々はさまざまなマスク、フェイスカバーを投げ捨てて歓声をあげた。


San Francisco Paid the Price for Lifting Spanish Flu Lockdown Early | NowThis

・2度目のマスク着用義務化で反マスク同盟が誕生

 しかし、1919年1月に再び流行が始まり、再度マスク着用が義務づけられると、自由な呼吸に慣れた人たちの多くは、また息苦しいマスクをつけるのをためらった。そこで、反マスク同盟が誕生した。

 同盟のトップは、エマ・ハリントン。偶然にも1911年に、サンフランシスコ初の女性有権者になった弁護士だ。反マスク同盟の発足式には2000人が参加したが、市当局は反対者たちの規模にひるまなかった。

 「これは、公衆衛生の問題で、マスクの好き嫌いには関係ないのは明らかです。ですから、わたしたちは、マスクに反対するどんな扇動者も気にしません」サンフランシスコ衛生局のアーサー・H・バレントは言った。


Masks for Protection Against Pandemic Flu 1918

・マスク着用の効果か感染者が減少。反マスク同盟は自然分解

 この反マスク同盟は、その月の間ずっと集会を続けたが、本当の意味で実のある目標を達成できたことはなかった。

 参加者の目指すところが一枚岩ではなかったのだ。ある者はマスク着用令を無効にする嘆願書を作ろうとし、ある者はただ衛生局のハスラーをクビにしろと要求した。その間、マスクの効果のせいか、急増していた感染者の数が横ばいになった。

 1919年1月15日、衛生局が二度目のマスク着用令を出す前は、感染者510人、死者50人だったが、1月26日になると、その数は、感染者12人、死者4人に減った。

 反マスク同盟の最後の集会でも、目立った成果はなにも得られなかった。メンバーたちは、ハリントンを下ろして新しいトップにすげ替えたが、一貫性のない混乱状態はおさまらず、ついには集会場所を提供していたウィリアム・スコットがすべての照明を切って、終止符を打つ結果になった。

 反マスク同盟は、失敗に終わった集会を二度と復活させられなったが、もうその必要もなかった。2月1日、衛生局は2度目で最後になったマスク着用条例を解除した。

References:Anti-Mask League: San Francisco had its own shutdown protests during 1918 pandemic - SFChronicle.com/ written by konohazuku / edited by parumo
「アメリカのマスクを嫌う風潮はスペイン風邪流行時からあった。1919年に結成された反マスク同盟(サンフランシスコ)」のページです。デイリーニュースオンラインは、カルチャーなどの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る