レトロ感がたまらない!ドリフターズにリメイクされた名曲たち。その元ネタを紹介!
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ド、ド、ドリフの大爆笑……♪
で始まったドリフターズの「ドリフ大爆笑」。昭和五十二1977年2月から平成十1998年4月まで20年以上にわたってお茶の間を賑わせた人気番組でした。
その中では多くの歌謡曲が流れ、今でも耳の奥に残っている方も多いと思いますが、これらの曲には少なからず「元ネタ」があり、動画などで聞き比べてみると面白いものです。
そこで今回は、ドリフターズによってリメイクされた名曲たちを一部紹介したいと思います。
隣組/オープニングテーマ♪とん とん とん からりと 隣組
格子(こうし)を開ければ 顔馴染み
廻して頂戴(ちょうだい) 回覧板
知らせられたり 知らせたり……♪※作詞:岡本一平「隣組」1番
隣組(となりぐみ)とは、今でいう町内会・自治会のご先祖様みたいなもので、昔ならではの濃密な人間関係が良かったり(何かと助かったり)悪かったり(何かとうざかったり)したそうです。
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物々しく出陣、ご町内を練り歩く隣組(子供隊)。いったい何を始めるんだろうか。
「とん とん とん からり」とは自宅を出てから3歩の距離にあるお隣さん家の格子(引き戸)を開ける様子を表わしています。
そう聞くと、若い方は「おい、施錠はしていないのか」と思うかも知れませんが、筆者も小さい頃は自宅に施錠など(就寝・外出時以外は)しておらず、ご近所さんも概ね同様でした。実にのんびりした時代でしたね。
で、家の中も江戸時代からの長屋に毛が生えたようなもので、格子を開ければ家の中がだいたい見える(あるいは、どの辺りにいるのかくらいは察しがつく)状態、実にオープンです。
「こんにちはぁ、回覧板でーす!」
そう声をかけて、お隣さんが出てくれば手渡し(あわよくば小遣いor菓子を期待し)、来なければ(長居は無用、と)玄関先に回覧板を置いて帰ったものでした。
故郷の空/誰かさんと誰かさん♪夕空晴れて 秋風吹き
月影落ちて 鈴虫鳴く
思へば遠き 故郷の空
ああ 我が父母(ちちはは)いかにおはす……♪※作詞:大和田建樹「故郷の空」1番
スコットランド民謡(18世紀ごろ)のメロディを聞いた大和田が、予備知識なしでインスピレーションのままに作詞したそうです。
明治時代から親しまれていましたが、昭和の敗戦後、まだ日本へ帰れずにいた復員兵たちがこの歌を聞いて、望郷の念を慰めながら苦境を乗り越えたという話を聞いたことがあります。
(あぁ、お父さんお母さんはお元気だろうか。弟、妹たちは誰が遊んでやっているのだろうか……)
ちなみに、元の歌「Comin‘Thro’The Rye(ライ麦畑で出逢うとき)」ですが、こちらは「ライ麦の中で出逢った男女は、きっと恋(たぶん、キス以上の何か)をするだろう」というR指定っぽい内容となっています。
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ライ麦は成長すると大人の背丈ほどにも伸びるため、生い茂ると周りから見られにくくなる……それで加藤茶も、麦畑でミヨちゃんと「チュッチュチュッチュ」したのでしょう。
まったく「故郷の空」みたいな風情もへったくれもありませんが、ドリフターズの方が元歌のニュアンスを忠実に伝えていたとは意外でした。
平和節/ドリフのバイのバイのバイ♪めでたい めでたい おめでたい 戦争(いくさ)がすんで おめでたい
物価の高いのも おめでたい 花火をあげろ 旗立てろ
いざ祝え みんな祝え 天下泰平おめでたい 日本が一番おめでたい
日本米(にっぽんまい)は高いから パイのパイのパイ
南京米(なんきんまい)やトンキン米でフライ フライ フライ……♪※作詞:添田さつき「平和節」1番
時は大正時代。第一次世界大戦で戦勝国となった日本のおめでたいムードをはじめ、好景気に乗じた物価の高騰や、その後の世界情勢などが歌われていきます。
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物価が高くなっても、給料は据え置きでも気にしない。とにかく大はしゃぎする日本人(イメージ)。
ただし、世間のはしゃぎっぷりとは裏腹に、あまり庶民の生活向上にはつながらず、やがて世界恐慌、第二次世界大戦へと暗い影を落とすのでした。
ちなみにトンキンとは現代のベトナムを指し、倍の倍の倍になる勢いで高騰する国産米の代わりに、中国大陸で作った南京米などと共に食べられていたようです。
元歌の社会諷刺に対して、ドリフターズでは独り身の淋しさを歌う曲としてアレンジされており、この主人公が幸せになることを願わずにはいられません。
他にもたくさん!探してみよう!以上、今回はお気に入りの3曲を紹介しましたが、ドリフターズの曲にはどこかで聞いたような懐かしさを感じる曲がまだまだあります。
歌の主人公は大抵ドジで失敗ばかりですが、それでも明るい未来を信じて前向きに生きて行こう……そんなメッセージが感じられるでしょう。
※参考文献:
江波戸昭『戦時生活と隣組回覧板』中央公論事業出版、平成十三2001年12月
大和田建樹・奥好義編『明治唱歌 第一集』中央堂、明治二十一1888年5月
添田知道『添田唖蝉坊・添田知道著作集 4 演歌の明治大正史』刀水書房、平成十七2005年3月
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