天才ヨウム、記憶テストで名門大学の学生を上回る成績を出す(米研究)

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天才ヨウム、記憶テストで名門大学の学生を上回る成績を出す(米研究)
天才ヨウム、記憶テストで名門大学の学生を上回る成績を出す(米研究)

天才ヨウム、名門大学生に記憶ゲームで勝つ image by:Harvard University

 世界最高峰と言われているのアメリカ、マサチューセッツ州にあるハーバード大学には世界中から英才が集まってくる。グリフィンくんは、そんな英才ぞろいの学生たちにテストで勝ってしまう天才ヨウムだ。

 ヨウムはオウム目インコ科の大型インコで、知能が高く人の言葉をよく覚える種として知られており、ペットとしての人気も高い。

 今回、名門大学に通う現役大学生と子供、ヨウムのグリフィンくんで、記憶を試すゲームを行った。その結果、グリフィンくんは、現役大学生よりも好成績を収めたのだ。
・大学生と子供とヨウム、記憶力を試すゲームにチャレンジ

 そのゲームのルールはこうだ。小さな色付きのポンポンをコップを被せて隠し、それをグルグル移動させてシャッフルする。

 シャッフルが終わったら、特定の色が指定されるので、同じ色のポンポンが入っているコップを当てるというものだが、ポンポンの数やシャッフルの回数を増やせば、それだけ難易度も上がる。



Not Your Average Bird Brain


・ヨウムのグリフィン、ハーバードの学生に勝利

 テストにはグリフィンくんのほか、6~8歳の子供21名とハーバード大学の学生21名が参加。グリフィンくんは子供の平均スコアには完勝し、ハーバードの学生が相手であってすら14回中12回は若干上回ったという。
 
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image by:Harvard University

 ちなみにグリフィンくん、過去の研究によって一般的な人間の4歳児よりも賢く、6~8歳児に匹敵する知能の持ち主であることが証明されている優等生だ。

 相手が優等生とはいえ、鳥に負けてしまったハーバードの学生の名誉のために言っておくと、ポンポンの数とシャッフル回数を最大にした最高難易度のトライアルでは、学生たちに分があった。この場合、さしものグリフィンくんもスコアが落ちてしまったという(それでも子供には勝った)。
 
 グリフィンくんのスコアが急落したきちんとした理由は不明だが、人間の知能が作用する仕組みと関係があるのではと推測されている。

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image by:Harvard University

・知的行動の基礎――頭の中のイメージを操作する力

 ゲームは、目に見えていない対象を記憶し、新しい情報(位置の変更など)に応じてそれをアップデートする力を試すもので、『Scientific Reports』(5月6日付)に掲載された研究の一環として行われた。

 ハーバード大学(アメリカ)とジョンズ・ホプキンズ大学(同)の研究チームが調べていたのは、脳が「心的表象」を処理する能力——つまりは頭の中のイメージ(視覚作業記憶)を操作(manipulation)する力だ。

 彼らが目指しているのは、その起源や発達を明らかにし、ひいては人間の知能の性質を理解すること。視覚作業記憶を操作する力は、人間の知的行動を支える基礎の1つなのだそうだ。

 「心の中で行われるあらゆる作業は、視覚作業記憶の中で行われます。外部からの情報を保存し、それをいじったりバラしたりして、より高次の認知に利用する――私たちはそれが人の知性の主要な要素の1つだと考えています」と、Hrag Pailian氏は説明する。

 もし、そうした能力が人間以外の動物にもあるなら、そこから人間の知能がどのようなものなのか理解を深められるはずだ。グリフィンくんはそのための手助けをしていたのだ。

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image by:Harvard University

・人と鳥が持つ操作能力の起源は?

 この研究での発見は、視覚記憶を操作する能力の起源をほのめかしている。グリフィンくんの卓越した力から、それが人間だけのものではない可能性が窺えるのだ。まず人間とヨウムの共通祖先が獲得し、やがてさまざまな種に受け継がれていったのかもしれないということだ。

 人間とヨウムが枝分かれしたのは、3億年以上も前のことだ。その共通祖先は、空を飛ぶ翼竜が現われ、哺乳類の祖先が生まれる前の古生代時代にさかのぼる。

証明はできませんが、可能性としては共通祖先が、何らかの基本的な能力を持っていたのかもしれません(Irene Pepperberg氏)

 中生代の恐竜がこの能力が萌芽し、その後に霊長類と鳥類で並行して進化した――。あるいは別の可能性として、共通祖先がこの力を獲得したのではなく、2つの系統で独自に発達したということも考えられる。

 しかし研究チームの見解では、操作は記憶力に立脚したもので、さまざまな種が似たような記憶力を持っているのだから、視覚記憶の操作を可能にする基本的能力が共通祖先に備わっていた可能性が高いだろうという。

 視覚記憶の操作という能力を共有する生物の範囲や、その起源を解明するにはさらなる研究が必要であるとのことだ。

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image by:Harvard University

・天才ヨウム、グリフィン

 ちなみにグリフィンくんがこうした実験の主役として選ばれたのは、脳の機能が人間に似ていながら、進化という点では人間と遠く離れている動物が必要だったからだそうだ。

 お腹を空かせたヒナや危険な捕食者を追跡する必要があったために、ヨウムには操作能力が備わっている可能性が高い。くわえてグリフィンくんは素晴らしい知能の持ち主であることをすでに証明しているし、カシューナッツをご褒美として認識してもいる。

 先生に「いい成績を取るには何をすればいいですか?」と質問して、実際にそれを実行する――そんな優等生のような存在なのだそうだ。

Age and Species Comparisons of Visual Mental Manipulation Ability as Evidence for its Development and Evolution | Scientific Reports
https://www.nature.com/articles/s41598-020-64666-1#Abs1
References:African grey parrot outperforms children and college students – Harvard Gazette/ written by hiroching / edited by parumo
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