「原辰徳研究」江本孟紀が明かす“名将”の資質「冷淡な曹操孟徳に憧れ」 (2/3ページ)
巨大戦力によって絶対的な地位を築き上げて、残酷かつ冷淡で手段を選ばない。(中略)「天下を取るなら、自分にも周りにも徹底的に厳しくしないといけないんだな」と考えました〉
原監督は同書で、その覚悟を示すエピソードとして、現在の阿部慎之助2軍監督、二岡智宏3軍総合コーチが鳴り物入りで入団した時のことも語っている。当時の長嶋監督にルーキーの起用を進言したのは自分だった、というのだ。結果、押し出されたのは、バリバリのレギュラーでチームの貢献者だったベテラン、村田真一と川相昌弘だった。
勝負に徹し、私情を挟むべからず。その心構えが、古代中国で「乱世の奸雄」と呼ばれ畏怖された武将から学んだものだったとは、なんとも驚きである。
ただし、江本氏らが原監督を「名将」と断言するのは、選手からの反発を招きかねない采配を断行する意志力だけが理由ではない。高い人心掌握術も兼ね備えているからなのだ。レギュラーを奪われた村田とのエピソードについて、再び江本氏の著書から原監督の言葉を引用する。
〈開幕のスタメンがベンチ裏で発表されると、案の定、真一は私の顔を見るなり「ちょっとお話があります」と言ってきた。(中略)私は真一が「わかりました」と言ってくれるまで、じっくり話をするつもりでいました〉
辛抱強く村田の主張に耳を傾け、阿部を起用する理由についても丁寧に説明し、村田の了解を取り付けたのだ。
「スタメンを外したり、2軍に落とした選手を監督室に呼んで、1対1で話し合っているのを何度も見ました。ムチを振るった選手に対しては必ず、何らかのフォローを入れるんです。マスコミにも『彼にはこういう理由で奮起してもらいたいから落とした』というふうにちゃんと事情を説明する。選手は意気に感じるわけです」(橋上氏)
江本氏も同調する。
「遠征先の行きつけの店で何度か遭遇したのですが、主力選手や若手、外国人選手、スタッフに至るまで、自腹で食事に連れて行き、腹を割って話をしているんですよ。私らの現役時代はこういうこともよくありましたが、今では珍しいことです」
グラウンドをひとたび離れれば、面倒見のいい親分肌な素顔がのぞく。モチベーターとしても一流ということだろう。