どうぞご贔屓(ひいき)に…その語源は”鼻息の荒い竜の子”だった?

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どうぞご贔屓(ひいき)に…その語源は”鼻息の荒い竜の子”だった?

「毎度おおきに。これからもご贔屓に頼んます」

気に入った人や業者などを選んで引き立てることを贔屓(ひいき)と言いますが、何でこういう漢字を書くのか、そもそも何で「ひいき」と言うのでしょうか?

そこで今回は、この「贔屓」の語源について紹介したいと思います。

贔屓のルーツは、古代中国の伝承から

今は昔、海を隔てたお隣の古代中国大陸で、竜が九頭の子供を産んだそうです。これを「竜生九子(りゅうせいきゅうし)」と言い、竜の子なら竜の筈だと思いきや、九頭すべて竜ではなく、それぞれ姿形も性格も大きく異なりました。

その内の一頭に贔屓(ひき、Bixi)がおり、姿は亀に似て重たいものを背負うのが大好き、というちょっと変わった性格をしていたそうです。

※楊慎『升庵外集』による。李東陽『懐麓堂集』では文章の読み書きを好むとされています。

故宮にある贔屓の銅像。確かに鼻息の荒そうな顔つきをしている。

Bixiとは重たいものを背負って鼻息を荒くしている擬音語で、贔屓という漢字表記は、三つ盛にしたたくさんの財貨(貝)を背負い、また懐にも財貨を抱え込んでいる様子を表しているのだとか。

紙幣やまして預金通帳や電子マネーなんてなかった時代ですから、財貨もそれなりに重かったでしょうが、もっと重いものなんていくらでもあろうにと思ったら、この貝は単に財貨のみならず、重要な役割なども意味しているようです。

要するに「もっと私を鼻息荒く働かせてください!荷物でも責任でも、重たいものなら何でも大歓迎です!」という贔屓の願いに応えて、たくさん仕事をあげることが「贔屓する」の語源になったとも言われています。

ちなみに「ひき」が「ひいき」となったのは、単に語呂の関係もあるのでしょうが、あまりに鼻息が荒すぎて、発音が伸びた結果かもしれません。

日常のあちこちで見かける贔屓

そんな熱意に応えるべく、中国はじめアジア各地では、昔から石柱や石碑などの土台として鼻息を荒くしている贔屓の姿が多く彫刻されています。

鎌倉・大江広元らの墓。赤丸部分の石碑を、贔屓が背負っている。

ことわざに「贔屓の引き倒し」と言いますが、これは贔屓を引っ張ってしまったら、その背負っている石柱などが倒れるため、あまり引き立てすぎると(周囲の嫉妬や妨害などによって)却ってダメになってしまうことを意味しています。

他にも不公平な「依怙贔屓(えこひいき。依怙とは私利私欲の意)」や、弱い者にことさら肩入れしたくなる「判官贔屓(ほうがんびいき。判官は悲劇の英雄・源義経)」など、現代でも暮らしの中で数多く使われています。

鼻息を荒くして働きたい仕事があるというのは、実に幸せなことです。それでは皆様、どうか今後ともご贔屓に。

※参考文献:
鎌田正ら『新漢語林 第二版』大修館書店、2011年2月
荒俣宏『怪物の友 モンスター博物館 【荒俣宏コレクション】』集英社文庫、1994年4月

日本の文化と「今」をつなぐ - Japaaan

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