8月の旧称「葉月」は太陰暦に由来。穂張月、紅染月…他にも沢山ある8月の別称を紹介
令和二2020年はなかなか梅雨が明けないと思っていたら、あっという間に8月。もうすぐ1年の2/3が過ぎようとしています。
さて、8月がむかし葉月(はづき)と呼ばれていたのは有名ですが、どうしてそう呼ぶのかについて、説明できる方はあまり多くないのではないでしょうか。
そこで今回は、8月の旧称「葉月」の語源や、その他の呼び方についても紹介していきたいと思います。
葉っぱが色づき、落ちる月葉月の語源については諸説ありますが、その中で有力とされるのが「葉落ち月」。旧暦(太陰暦)における8月は現在(新暦、太陽暦)の大体9月で、木の葉が色づき、落ち始める時期を意味すると言われています。
他にも渡り鳥の雁(ガン、かり)がその年で初めて日本に渡ってくる「初来月(はつきづき)」や、南方から台風が多く吹き寄せてくる「南風月(はえづき)」、稲穂が大きく育つ「穂張月(ほはりづき)」などが訛り、縮まったという説もあるようです。
※しかし、日本にやってくる渡り鳥は雁だけではなく、なぜ雁が初来月に選ばれたのかスッキリしません。渡り鳥と言えば、この時期はツバメが南方に渡り去るため「燕去月(つばめさりづき)」の異名もあります。
他にも、涼しい秋風の立ち始める「秋風月(あきかぜづき)」、木々が紅葉に染まり始める「木染月(こぞめづき)」や「紅染月(べにぞめづき)」、竹が色鮮やかに茂り始める「竹春(ちくしゅん。竹にとっての春)」、名月で知られる「仲秋(ちゅうしゅう。中秋は旧暦8月15日限定)」など、8月には様々な別名が伝えられています。
英語の8月「August」はローマ皇帝アウグストゥスに由来ちなみに、英語では8月をAugust(オーガスト)と習いましたが、これは初代ローマ皇帝アウグストゥス(Augustus。在位:紀元前27年~紀元14年)が暦の運用を修正した功績を後世に伝えるため、自分の名前をつけたのだそうです。
「毎年8月は、我が名と功績を称えるように!」
増上慢もいいところですが、暦の正確な運用はそれだけ偉大な功績であったこと、そして周囲の批判を黙らせるだけの権勢を誇っていた(であろう)ため、今日でも西ヨーロッパを中心に、広くアウグストゥスの名が称えられ続けています。
【その他の言語でも称えられているアウグストゥス】
Augustus(オランダ語)
Agosto (イタリア語、スペイン語、ポルトガル語など)
Avgust(ウズベク語、スロベニア語)
August(ドイツ語、エストニア語、スロバキア語など)
Août(フランス語)
Avgusta(ボスニア語)
Август(セルビア語、マケドニア語)
Augusztus(ハンガリー語)
ローマ帝国の歴史が西洋文化に大きな影響を与えていることを、8月の呼び方一つとっても実感できますね。
終わりに立秋(りっしゅう。8月8日)を過ぎると、暦の上でこそ秋となるものの、まだまだ暑い日本の夏。
早く木の葉が紅く色づき、涼しい風に吹き散っていく眺めが待ち遠しいものですが、二度とは巡らぬ今年の夏もまた、一期一会のご縁として味わえたらと思います。
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なんと400語超あるとも言われる日本情緒あふれる「雨の呼び名」を一挙ご紹介 雛月、蚕月、病月…3月には別称がたくさん!3月の古称「弥生」にはどんな意味があるのか?※参考文献:
杉本つとむ『語源海』東京書籍、2005年3月
山口謠司『にほんご歳時記』2015年1月
別冊太陽『日本を楽しむ暮らしの歳時記 夏』平凡社、2000年6月
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