人食い殺人鬼のターゲットの選び方、殺しのパターンが判明(米・独共同研究)
人食い殺人鬼の研究調査/iStock
シリアルキラー(連続殺人犯)のメンタリティ解明へ向け、近年犯罪心理学は大きな進歩を遂げた。それでも、人が人を食らうという殺人鬼の心を覗き込もうという研究者はなかなかいない。
深淵を覗くとき、深淵もまたこちらを覗いているのだ――。
そんな数少ない怖いもの知らずの研究グループが、人食い殺人鬼が犠牲者を選ぶパターンや殺しの手口を分類している。
『Frontiers in Psychology』(8月3日付)に掲載された研究では、1900年以降に人食い殺人を犯し、有罪判決を受けた121名を対象に分析が試みられた。
その犠牲者は631人にものぼるが、彼らの手口には一般的な人殺しとは明らかに違う傾向が見られたという。
・人食い殺人鬼の特徴
まず人を殺し、その犠牲者を食うような犯罪者はきわめて稀で、しばしば性が関連している。彼らは主に男性で、人を食わない殺人犯に比べて年齢が高い傾向にあった。その一方で、ターゲットには比較的若い相手を狙う。
また殺しの手口にも特徴がある。銃で射殺するよりも、刺殺や絞殺、あるいは撲殺のように自分の手で直接殺すことを好むのだ。このことは、彼らが殺しを楽しんでいることと関係している可能性があるという。
しかも、ただ殺すだけでなく、犠牲者の肉を牛肉や豚肉と偽って、何も知らない人たちにその肉を売ることで、病的なスリルを得ているふしすらあるという。
・身内に手を出すのはもっともイカれた殺人者
だが、研究グループがもっとも関心を引かれたのは、人食い殺人鬼が赤の他人を犠牲者に選んでいる点だ。じつは一般的な殺人では、犯人が犠牲者の知り合いということがしばしばだ。だが、人食い殺人鬼の犠牲者の中に、彼らの身内はわずか2.5%しかいなかった。
さらにそのような身内を食ったごく少数の殺人者の3分の2近くが、最重度の精神疾患を患っていたという。他人を殺して食った殺人者では22%なので、かなり多いことが分かるだろう。
手にかけたのが身内であれ赤の他人であれ、人を食った殺人鬼は、かなり精神バランスが崩れていると思われるが、それでもその多くは身内は食わないという自然のロジックに従っている。それを破るのはもっともイカれた者だけであろうと研究グループは推測している。
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・なぜ人が人を食べるのか?
自然界において、共食いは広く見られる行為で、1500種以上の動物で確認されている。だが、トウブスキアシガエルのおたまじゃくしなど、たとえ共食いをする種であっても身内だけは食べない種が存在する。
今回の研究からは、カニバリズム(同族食い)は進化の上で有利になるような行為ではない可能性があり、トウブスキアシガエルなどもそのために身内を食わないのではないかと推測されている。
一方で、生来の共食い種ではない人間であるが、その背後にある進化的な衝動が、ごく少数の人間の行動に影響している可能性もあるようだ。
Frontiers | Kin-avoidance in Cannibalistic Homicide | PsychologyReferences:iflscience/ written by hiroching / edited by parumo
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpsyg.2020.02161/abstract