歴代総理の胆力「菅直人」(1)「イラ菅」の異名が付いた理由 (2/2ページ)
さらには、前任総理の鳩山由紀夫は東大工学部卒だったが、こちら菅は東工大応用物理学科卒でともに「理系脳」、すなわち物事の進め方は「情より知」が先行するタイプで、菅の場合はこれに自分の意に沿わぬ相手にはすぐイラつき、情け容赦なく怒鳴りつけるというヘキが加わり、「イラ菅」の異名が付いていた。ために、人の集まりが悪く、民主党内の求心力は脆弱で、政権運営はことごとく躓いたのだった。結果、前任の鳩山同様、一年で退陣を余儀なくされた。しかも、政策的な実績はほぼゼロと言ってよかったのである。
その政権を振り返ってみると、政権に就いて早や1カ月後の7月には参院選が待っていたが、財務省からの消費税10%の増税案を口にしたことで、参院選は敗北した。しかし、その直後となる9月の代表選は対抗馬に強力候補が出ずで、からくも「再選」を果たすことはできたのだった。
しかし、その後も、政権運営は迷走の連続だった。折から、TPP(環太平洋経済連携協定)交渉が政局の焦点に浮上してきたが先送り、鳩山前総理が口火を切った沖縄の普天間飛行場移設の代替案を、自ら模索せずであった。
一方で、政権基盤の強化を模索して、自民・公明両党との「大連立構想」を打診したが、時の自民党総裁・谷垣禎一から「1党独裁に通じる巨大政党の誕生は好ましくない」と一蹴されている。
そのほかにも、安易に日本の国債格下げ問題に言及して大恥をかき、引き上げるべき法人税を「引き下げる」と答えたり、TPP交渉を「IPP」交渉と読み違うなど、経済・財政の弱点も見せつけた。
■菅直人の略歴
昭和21(1946)年10月10日、山口県宇部市生まれ。東京工業大学理学部卒業後、弁理士となる。昭和55(1980)6月、衆議院議員初当選。平成8(1996)年、厚相として薬害エイズ事件に対応した。平成22(2010)年6月、民主党代表。内閣組織。総理就任時63歳。現在73歳。
総理大臣歴:第94代 2010年6月8日~2011年9月2日
小林吉弥(こばやし・きちや)政治評論家。昭和16年(1941)8月26日、東京都生まれ。永田町取材歴50年を通じて抜群の確度を誇る政局分析や選挙分析には定評がある。田中角栄人物研究の第一人者で、著書多数。