愛人に全財産相続は可能?愛人への遺贈は相続トラブルを要覚悟!

心に残る家族葬

愛人に全財産相続は可能?愛人への遺贈は相続トラブルを要覚悟!

相続並びに相続税の実務において、関わりたくない案件が出てくる時がある。特に多いのが愛人関係とそれに付随する非嫡出子の問題であった。家庭内部の問題であるため、深入りしたくはなかったのだが、実務を遂行する上で避けることはできなかった。当然、守秘義務に反する行為は厳禁となっているので、筆者自身墓に持っていかなくてはならない話も多い。

■本当にあった愛人が原因となった相続トラブル

税理士事務所を退職し一般企業に転職した後でも相続並びに相続税対策の相談を受けることが多いのだが、困ったことに愛人関係の相続について相談を受けることがまれにある。不倫や浮気の是非については、当コラムでは触れないが、特殊な例として記憶に留めて置いて欲しいと同時に注意喚起の意味で、ある特殊な例について触れてみたい。

■そもそも愛人に全財産を相続させることは難しい

筆者が最初に相談を受けた例は、愛人に全財産を相続させる方法についてであった。結論は遺留分(相談当時は遺留分減殺請求、現在は遺留分侵害額請求権)が発生するため、全財産を相続させることは不可能となる。当該相談者は結局愛人と普通養子縁組して、法定相続分を相続させた。

ここで遺留分(民法第1028条)について簡単に解説すると、兄弟姉妹以外の相続人(配偶者・子・両親)が相続財産の二分の一を限度として、最低限の財産を相続できる権利となっている。

■愛人が絡んだ相続トラブルの多くは愛人への遺贈が原因

一番困った相談は、愛人への相続ではなく愛人への遺贈(遺言により他人に財産を無償で譲ること)であった。内容は、ある資産家の男性A氏が居た。A氏は資産家であると同時に恋多き人であった。家族は配偶者であるB子、長男であるC男、長女であるD子の四人家族であった。A氏は若い頃から数多の女性と浮名を流し、非嫡出子も数名いると聞いていたのだ。A氏自身は老衰によって亡くなったのだが、晩年に相続並びに相続税対策は確りと実行していた。そして問題は、遺言書にあったのだ。

■裁判の結果、愛人への遺贈が認められた

前述の非嫡出子は全て認知しているため、全員相続権があり、法定相続分により相続されることになった。しかし、亡くなる十数年前から愛人であるE子と懇意となり、自宅に帰らずE子の為にA氏が購入したタワーマンションに居住していたのだ。入院した時点でも、A氏は家族には直接知らせず、入院の連絡を受けた筆者がA氏の家族に連絡していた。遺言執行時にE子に家族と非嫡出子全員の相続分を控除した残りの全財産を遺贈するとされていたのだ。内容を不服、更にA氏とE子の不倫関係を公序良俗違反(民法第90条)として裁判となってしまったが、最高裁判所の判断としては不倫関係と遺言書の内容は無関係であるとして、E子に残りの全財産を遺贈することで結審したのだ。

■愛人関係を持っている人は相続トラブルも覚悟しなければならない

担当した弁護士によると、このような判例は稀ではあるが過去にも存在したとのことだった。遺贈の財産が他の相続人と比較しても多額になるわけではなかったため、更に十数年に渡って同棲生活をしていたことが考慮された結果であるとされた。一般常識としては称賛できるような案件ではないかもしれないが、一定の限度額を超えなければ公序良俗には違反しないと見做すこともできる。恋多き人は注意したほうがいいのかもしれない。

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