現代なら炎上必至!日本各地のお国柄をまとめた「六十六州人国記」が毒舌すぎる【中四国&九州編】

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現代なら炎上必至!日本各地のお国柄をまとめた「六十六州人国記」が毒舌すぎる【中四国&九州編】

日本各地の「お国柄(県民性)」をまとめた『六十六州人国記(ろくじゅうろくしゅうじんこくき)』。

現代だったら炎上必至な誹謗中傷レベルの酷評に全日本人から非難囂々の勢いですが、今回は中国&四国&九州編を紹介。

第一部:東北&関東甲信越(16都県)
第二部:中部&近畿(13府県)
第三部:中国&四国&九州(16県)←ここ!

さて、いよいよラストスパートですが、皆さんの地元はどのように書かれているのか、見てみたいような、見たくないような……。

※以降、長くなるため原文は割愛し(読み比べたい方は参考文献を参照)、ざっくりとした意訳と、それに対するコメントを紹介していきます。

※また、旧国境と現代の都府県境が必ずしも一致しない事があるため、都府県と旧国名の対応は概略で紹介しています。

鳥取県(因幡国・伯耆国)

因幡国(赤)&伯耆国(青)

【因幡国】
八上、智頭、邑美郡の人々は誠実で勇敢、約束を破らない。一方で、高草、気多、法味、巨濃郡の連中は性格がねじ曲がってずる賢く、丹波国に似ている。
一つの国でこんなに性格が違うのは、天がどんなに公正でも直せなかったためだろう。

【伯耆国】
こいつらの言うことはすべて話半分に聞くべし。偉人にあえばすぐ触発されて善行に努めるも三日で飽きて、と言って悪行に走ろうにも、これまた三日で飽きてしまう中途半端な連中である。このまま一生迷い続けるのであろう。
世に三日坊主(三日僧)という諺があるが、こいつらがその起源と言われている。

因幡国では地域によって待遇に差があったようですが、丹波国に似ているというのは、作者にとってかなりのパワーワード(悪い意味で)みたいです。

また、伯耆国は万事中途半端と言いますが、三日坊主(三日僧)という慣用句はこの頃(室町時代~戦国時代)からあったんですね。伯耆人に限った話ではなさそうですが。

島根県(出雲国、石見国、隠岐国)

出雲国(赤)&石見国(青)&隠岐国(緑)

【出雲国】
この国では何でも誠実さを第一に心がけているようでいて、何でも神頼みにして善悪を考えない傾向がある。
我が身の悪を顧みず、盲目的に信心したところで何のご利益があるだろうか。神仏を尊重するのは日本人の常識だけど、この国の連中はどいつもこいつも神を拝むパフォーマンスばかりだ。

【石見国】
石見国は丹後国と同じで、よいのは鷹や隼ばかり、人間はロクなのがいない。誠実な者は千人に一人いるかどうかで、なまじ知恵がある者は悪だくみばかり。どうしようもない。

【隠岐国】
全体的に軟弱で勝手気ままな連中ぞろい。知夫利郡の者は例外的に誠実で頼もしいが、海部、周吉、穏地郡の連中は風になびく草のように、善にも悪にもただ流されるだけ。
辺鄙な離島だが、まぁ石見国よりははるかにマシである。

出雲国と言えば、毎年10月に全国の神々が集まる「神在月(かみありづき)」の本場。

しかし信心深い地元の人々に対して「どうせ心がこもっていないパフォーマンスだろ?善悪を考える頭もないくせに」と皮肉るのがこの作者の真骨頂。

石見国でまともなのは鷹と隼ばかりで、人間はロクでもない……まさに丹後国(京都府北部)でも同じことが言われていました。

そして隠岐国……たぶん作者は知夫利郡にしか行っていなくて(あるいはそこ出身の者しか知らなくて)、後はテキトーに言っている感がします(それなら無難な誉め言葉もあろうに、と思いますが、そこをあえて貶すのが作者クオリティ)。

岡山県(美作国、備前国、備中国)

美作国(赤)&備前国(青)&備中国(オレンジ)

【美作国】
百人中いれば九十人は万事において卑劣で欲深く、人から借りたものを返さずゴネ得したことをドヤ顔で自慢する連中である。
どいつもこいつも頑固で人の意見を聞き容れないが、武士が十人いれば、そのうち三、四人はマシな人材がいる辺り、石見国よりはマシである。

【備前国】
何でも利益優先なので、言ってることとやってることが違うなんてザラ(十のうち五、六)である。
虚栄心が強く、使いこなせもしない武器や理解していない兵書など並べ立て、さも達人のような顔をしているが、しょせん武士道など出世の道具くらいにしか思っていない。まぁ、それでも何もしないよりははるかにマシではあるが。
もし優れた指導者が現れ、50年ほど教育し直せば、少しは更生できるかも知れない。

【備中国】
武士はもちろん百姓にいたるまで義理堅く、意志の強い者が多い。しかし怖い者知らずでついカッとなって兄弟同士で殺し合うなど、道を外れることも多い。
備前との国境から半分はロクなのがいない。

作者の中では「(石見国<)美作国≦備前国<備中国」という図式が成り立っているようです。

借りたモノを返さない美作、道具立てばかりの備前、そしてカッとなると兄弟でも殺し合う備中……本当にこういう事例に遭遇したのなら、そのエピソードを紹介した方がはるかに面白い記事になりそうです。

広島県(備後国、安芸国)

備後国(赤)&安芸国(青)

【備後国】
この国の人々は生まれつき誠実で約束を破るようなことは少ないが、愚かなために無邪気に非礼を働くこともある。だいたい備中と同じような血の気の多さである。

【安芸国】
ひたすらマイペースで他人の善悪に興味がなく、嘲笑されても気にしない。武士は特にその傾向が強く、頼りないようだけどこれも純粋さゆえであり、好感が持てる。
特に佐伯、沼田、加茂郡の人々は心身健やかで二心など抱かない。

基本的に好意を持っているようですが、愚かで無邪気とかひたすらマイペースと言った、空気の読めなさが指摘されています。

全体的に、西へ行くほど心穏やかな傾向があるようです。

山口県(周防国、長門国)

周防国(赤)&長門国(青)

【周防国】
周防国の人々はおおむね律儀だけど、吉敷、佐波、都野三郡の者は節操がなく、昨日まで肩を並べ親しくしていた相手でも、出世すればすかさず取り入る調子の良さである。
大島、玖珂、熊毛三郡の者は多少マシだが、結局はポリシーがなく、悪事も善行も少ない。要するにだらけている。

【長門国】
この国の人々はこれと言った特徴もないが、じっくり考えてから答えるためか会話のテンポが悪い。物事に対しては熱しやすく冷めやすく、利口だが根性がないため、武士としての資質に欠ける。

節操がなくだらけた印象の周防国と、沈思黙考ゆえ会話の歯切れが悪く、根性のない長門国。

本州の最西端まで書いて来て、だんだん作者の筆もダレてきたように感じてるのは筆者だけでしょうか。

徳島県(阿波国)

阿波国

おおむね心身健やかで、十人いれば七、八人は知性があって気配りもできる。
しかし、頭が良すぎて奇抜な振る舞いに及ぶこともある。それでも強盗などを働くような卑しさはなく、武士も高潔で胆力がある。
三好、麻植、名東、名西郡の者たちは一流だが、勝浦、那賀、板野、阿波、美馬郡の者たちは少し頼りない。

いったいあの作者が、現地でどんなおもてなしを受けたのかと思うくらい、めちゃくちゃ褒めちぎっています。

何なら作者お気に入りの信州(信濃国)以上に高評価みたいですが、頭が良すぎるゆえの奇抜なエピソードも書いて欲しかったところです。

香川県(讃岐国)

讃岐国

惰弱な性格で、百人いれば半分は悪賢い。とりわけ武士たちは諂(へつら)い者が多く、おべっかで取り入って出世しようと企むのは、噂通りである。

本当にそんな噂があったのか判りませんが、短くバッサリと散々な評価。

せめて裏付けとなるようなエピソードの一つも欲しいものですが、実際にそのような振る舞いの武士がいたなら、より詳しく記録されていそうにも思います。

愛媛県(伊予国)

伊予国

昔から海賊がのさばっており、海上交通に支障を来している様子は噂通り。今でも徒党を組んで海賊稼業で身を立てる輩が多く、関東の強盗に並ぶ名物?となっている。
武士たちは凶暴で手ごわいが、武士道精神はなく、思慮分別に欠けるため暴走の挙げ句自滅しがち。

作者も海賊のために難儀したのでしょうか。まるで見て来たような書きぶりになっています。

武士道精神の有無が思慮分別につながるという価値観が鎌倉時代にあったとは思えませんが、現代に伝わる「伊予の駆け出し」を思わせる荒くれ者ぞろいだったようです。

高知県(土佐国)

土佐国

土佐の人々は一本気で素直な性格。土佐、長岡、吾川郡は特にその傾向が顕著である。
性格の良さは土地柄ゆえなのか、鳥獣にいたるまで性格がよく、猿も芸を仕込みやすい。

誰もかれもがよい性格と好評価なのに、褒められた気がしないのは、きっと最後の「猿も芸を仕込みやすい」という余計な一言のせいでしょう。

褒めながら相手を不愉快にするというのは、作者ならではの芸当ではないでしょうか。

福岡県(筑前国、筑後国)

筑前国(赤)&筑後国(青)

【筑前国】
九州には珍しくチャラ男の多い国で、勇気がない訳でもないけど、ここ一番の根性もないので大成しない。
千人いれば七、八百人が酒や女を好み、総じて然るべからざること甚だしい。

【筑後国】
筑前と違って十人に八人くらいの割合で誠実な者がいるが、下賤の者は身分相応に卑しい振る舞いが多い。

両国で評価が極端に分かれるのは、面している海(筑前が玄界灘、筑後が有明海)が違うためでしょうか。

基本的に作者は「武士たるもの、酒と女に溺れるなどけしからん!」と思っているようですが、こういう人に限ってムッツリだったりするのはお約束です。

佐賀県&長崎県(肥前国、壱岐国、対馬国)

肥前国(赤)&壱岐国(青)&対馬国(オレンジ)

【肥前国】
肥前は勇猛な気風の国で、義のためなら何者にも怯まず、百人いれば九十九人はそうである。臆病者を見かけるのは非常に珍しく、武士ともなれば尚更である。
君主は家臣や領民をいたわり、家臣や領民は主君を敬愛し、忠義のためなら命を惜しむことはない。
でも、言葉遣いは汚らしく、知性も劣っている。こんな感じで信州に似ているが、一致団結すれば信州でも敵うまい。

【壱岐・対馬国】
どっちも遠島だけど、大隅・薩摩の両国よりはるかに華やかである。ただし、人々は気弱な性格でだらけがち。

なぜここで信州と比べる?と思ってしまうくらい唐突でしたが、作者お気に入りの信州を上回る国が登場して驚きです。

しかし、あまりにも美化しすぎで、本当に100人中の99人が勇気を実証したのか?と勘ぐってしまいます。本当に、作者は当地でどんな接待を受けたのでしょうか。

ちなみに、壱岐国と対馬国をまとめて紹介しているのは原文通りで、また、華やかさについては当地を褒めているのではなく、大隅国と薩摩国を「遠島よりも華がない」と貶したい本音が、行間から滲んでいます。

大分県(豊前国・豊後国)

豊前国(赤)&豊後国(青)

【豊前国】
こいつらは馬のようなもので、見かけは名馬のようでいて、いざ乗ってみると癖が強くてめんどくさい曲馬(くせうま)ぞろい。
とことん性根がなく、いくら忠孝義理を教えてもめんどくさがって向上心がない、これからは曲馬国とでも改名すればいいのに。

【豊後国】
百人いれば九十人は偏屈で、多少はマシな残り十人も周囲の九十人に流されて堕落していく。勇気はあるが道理を知らずに暴走することが多い。

癖の強さを「お前(作者)に言われたくないよ」と思ってしまいますが、具体的に豊前人のどこがどう面倒だったのか、書くのを面倒がった作者も五十歩百歩な印象です。

また、豊後国については行かなくても書けるテキトーな内容であり、だったら無難に褒めておけと(以下略)

熊本県(肥後国)

肥後国

だいたい肥前国に似ているけど、勇気にかけては肥前国の1/100程度である。武士たちも肥前に比べて軟弱、でも筑前や豊前よりは上である。
知性はあるがそれゆえに理屈っぽく、思い思いに行動するので団結することを知らない。

勇敢なイメージで知られる「肥後もっこす」「九州男児」たちが聞いたら怒り出しそうな貶しぶり(ここに限った話ではありませんが)。

しかしどこより上だの下だの、作者はどれだけ勇猛果敢なのかと訊いてみたくなります。

宮崎県(日向国)

日向国

この国の連中は気が荒くて乱暴狼藉ばかり働き、事の善悪を考えもせず口論になればすぐにカッとして相手を殺す野蛮人ぶりにうんざりである。
命を捨てることがカッコいいと思い込む過激思想が蔓延している。あぁ恐ろしい恐ろしい(恐るべし恐るべし)。

作者は殺されかけでもしたのでしょうか(ハイそこ、舌打ちしない)、まるで世紀末的な光景が、作者の偏見か妄想であることを願うばかりです。

鹿児島県(大隅国、薩摩国)

薩摩国(赤)&大隅国(青)

薩摩も大隅も大した違いはなく、どいつもこいつも「男が畳の上で死ぬなど恥、戦場での討死こそがカッコいい」と思い込み、神も仏も蹴散らす勢いで暴れ回って無駄死にする様は論ずるに値しない。
また、平時においては主君が姿勢を正していても、家臣は足を投げ出したり、あるいは立て膝で(足をのべ或いは立てながら)臨席することも多く、主従関係もへったくれもない無礼者ばかりである。

ついに大トリですが、日向国かそれ以上に暴れん坊揃いだったようで、きっと作者も「議を言うな(つまらぬ御託を並べるな)!」と斬りかかられたことでしょう。

余談ながら、薩摩・大隅の両国においては一般的に行われていたらしい立て膝座りは、作者の価値観からすると「無礼(主君の前ですべきではない座り方)」と見られていたようです。

終わりに

……さて、北海道(蝦夷地)と沖縄県(琉球国)を除く天下六十六州の「お国柄」を見て来ましたが、皆さんの地元はいかがだったでしょうか。

大半の方が「ふざけるな!」と思っていることは想像に難くありませんが、きっと各地を旅した本当の作者は、その道中で良かったことや嫌なこと、様々あったのだと思います。

各地を巡る苦労の中で、良かったことや楽しかったことも書いてほしかった(イメージ)。

現代に比べて旅の移動手段も限られ、身の安全も保障されていなかった時代のことですから、ボロッカス書かれたことはさておき、作者の苦労に思いを馳せてみると、大らかな気持ちになれるかも……と、相州人(神奈川県民)の筆者は自分に言い聞かせてみます。

※参考文献:
北条時頼『六十六州人国記』東京洛陽堂、明治44年5月

日本の文化と「今」をつなぐ - Japaaan

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