「昨夜その角で見かけたよ」……今でも街に妖怪の存在が息づく『遠野物語』の舞台【その1】

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「昨夜その角で見かけたよ」……今でも街に妖怪の存在が息づく『遠野物語』の舞台【その1】

「遠野物語」を読んだことはありますか?

岩手県の遠野市に伝わる、怖い話・哀しい話・残酷な逸話や伝承などを「民俗学の父」と呼ばれた柳田国男が編纂したもので、今から110年前に発表されたものです。

風光明媚で自然に囲まれたこの地方には、昔から語り継がれた不思議で異様な体験談が多く、現在でも身近に感じられるそう。

24時間眠らない現代の都市には、妖怪や神さまが身を寄せる居場所が無くなったものの、豊かな自然が残された遠野にはその存在が息づいています。

たくさんの不可思議な話が集められている「遠野物語」。その世界に引き込まれてみませんか?

妖怪とは?…を追求、全国の怪異伝承を集めた官僚・柳田国男

民俗学者で官僚でもあった柳田國男(1951年)(写真:wikipedia)

日本民俗学の父と呼ばれ、作家で官僚でもあった柳田国男

岩手県遠野地方の民話蒐集家で小説家の佐々木喜善より語られた遠野に伝わる妖怪や神などにまつわる異聞を、柳田が筆記・編纂した形で出版されたのが「遠野物語」です。

今でも多くの人が愛読しています。

遠野地方の曲がり家(母屋と馬屋が一体となったL字型の住宅)(写真:photo-ac)

「遠野物語」が発表されたのは明治43年(1910年)。

当時、日本人の多くが海外へと関心を持ち目が向く時代に、柳田国男は、その対極ともいえる日本の山村に注目。

本の出版にあたり以下の言葉を周囲に送りました。

此書を外国に在る人々に呈す
— 柳田國男「献辞 『遠野物語』」

題名とこの献辞のみ筆で書かれいるため、清書本を印刷所へ持ち込む最終段階で書いたのではと推測されています。

近代化する都会人へ…「平地人を戦慄せしめよ」

「ゆき女」(写真:wikipedia)

「遠野物語」序文の最後のほうには、

国内の山村にして遠野より更に物深きところには又無数の山神山人の伝説あるべし。

願はくは之を語りて平地人を戦慄せしめよ。
— 柳田國男「序文 『遠野物語』」

と記されています。

「鬼」(写真:wikipedia)

昔は、土地の神や妖怪など目に見えないものを畏怖していた人間が、明治に入り何んでも西洋的な解釈で解決しようとするようになってしまいました。

平地人とは、都会人のこと。柳田国男は、「妖怪や幽霊、雪女や鬼など…今でも遠野には、人間には解明できないような摩訶不思議な伝説が起こっている」と伝えたかったのでしょう。

「平地人を戦慄せしめよ」…のひと言に強い思いが感じられます。

遠野にある河童の伝承地カッパ淵(写真:wikipedia)

当時、妖怪伝説や庶民信仰などは「邪な教え」と禁止されていた!

遠野物語が出版された明治43年(1910年)、日本は富国強兵・殖産興業をかかげ近代化を推し進めていた頃でした。

日本政府は、妖怪伝説や庶民信仰などは、近代化の障害になる迷信で邪な教えであるとして厳しく禁止していたそうです。

そこから110年が経過した今。

近代化が進み、逆に妖怪伝説や庶民信仰などが好まれるようになりました。

ヨーロッパの建築様式を取り入れた遠野駅(写真:wikipedia)

長い時を経ても未だに愛読されている「遠野物語」。どのような話が収められているのでしょうか?

【その2】に続く…

日本の文化と「今」をつなぐ - Japaaan

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