「昨夜その角で見かけたよ」……今でも街に妖怪の存在が息づく『遠野物語』の舞台【その2】

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「昨夜その角で見かけたよ」……今でも街に妖怪の存在が息づく『遠野物語』の舞台【その2】

明治時代、官僚で民族学者でもあった柳田国男が編纂した「遠野物語」

岩手県の遠野地方に伝わる、妖怪・神や人間の恐ろしい本性により引き起こされた怪異などの話が119話収められています。

遠野物語は全て実際にあった話。実際の人物や場所もあるものの正直には記せないために漠然とした書き方をしたとか。

明治時代、世の中が急速に近代化しなんでも科学的に割り切ってしまうようになった都会人に向け「山にはさまざまな伝承が残っているのだぞ」……という柳田国男の強い想いが感じられます。

現在でも、「昨日、そこの角で座敷童見かけたよ!」という話があるという遠野。旅行で訪れてもよし、秋の夜長に遠野物語をじっくり読んでもよし。

摩訶不思議な世の中に引き込まれてください。

前回の記事はこちら

「昨夜その角で見かけたよ」……今でも街に妖怪の存在が息づく『遠野物語』の舞台【その1】

妖怪・神・子殺し・姥捨山などさまざまな怪異が…

 姥捨山・高齢の親を山に捨てることとなった息子と親(写真:wikipedia)

遠野物語に収められている話は、全部で119話。座敷童・かっぱ・山の神・雪女・天狗・姥捨山など、聞いたことのある話から、養蚕や馬の神様の話、神隠し、臨死体験などさまざまな目撃談が収められています。

たとえば……

夫婦になった馬が殺され後を追った娘

自分の馬を愛するあまり夫婦になった娘。怒った親に馬を殺され、後を追い命を絶つ。そしてその魂を慰めるため、娘と馬をかたどった小さな像が作られ守り神「オシラサマ」として今も信仰されている話。

オシラサマを千体展示している御蚕神堂(写真:伝承園)

津波にさらわれた妻の幽霊と再会するも…

愛する妻と子供と暮らしていた男。ある日、津波に妻子が流される。悲しみのまま受け入れられないでいたら、月夜の日、浜辺で男と一緒にいる妻の姿を発見。

実は、その男は妻が結婚前に好きだったといっていた人物で、二人は幽霊になって添いとげたという悲しいお話。

誤解から姉を殺してしまった妹

姉が芋を焼き、真ん中の部分を妹にあげたところ、妹は「姉が美味しい部分を食べたに違いない」と誤解し、憎くなり包丁で殺してしまった。

姉妹は、郭公(かっこう)と時鳥(ホトトギス)となり、今も山の中に生息しているというお話。

カッコウ(写真:wikipedia)

いなくなった男を探し鳥になっても鳴き続ける娘

寂しい声で鳴くオット鳥。実は、かつて娘が親しい男と山に行った際、男がいなくなり探しても見つからなくなってしまった。

娘は、男を探し続けているうちに、「オットー」という夫を求めるような悲しい鳴き声の鳥となって、今でも探しているというお話。

オット鳥ではないかといわれるミミズク(写真:wikipedia)

遠野物語は理不尽で切ないお話も多いのです。

柳田国男は、表面的には急速に近代化する世の中でも、人間が本来持っている不可測な部分や消しても消せない情念があることを自覚せよと、都会人に訴えかけているような気がします。

岩手・遠野「伝承園」
http://www.densyoen.jp/index.html

妖怪に出会える「とおの物語の館」

早池峰山。「遠野三山」の一つ(写真:photo-ac)

岩手県の遠野は、千メートル級の山々に囲まれた自然豊かな場所

四季折々の大自然や名物を楽しめ、観光地としても知られています。遠野物語にも登場する特徴的な名所がたくさん点在しているのでサイクリングや徒歩で巡るのも人気です。

そして、「とおの物語の館」では、遠野に伝わる昔話しを映像や音声で体感できます。

妖怪の背後に短く編纂された物語も展示されているので、一つ一つ触れながらどんどん遠野物語の世界に引き込まれていくよう。

ここに訪れると、遠野物語をじっくりと読んでみたいという思いにかられるでしょう。

「とおの物語の館」にある、柳田國男が定宿としていた旧高善旅館「柳翁宿」(写真:wikipedia)

日本の文化と「今」をつなぐ - Japaaan

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