縄文時代へのタイムスリップを通して描く「若者の持つ可能性」 (3/3ページ)

新刊JP

この林に対して託したものはなんでしょうか?

水之:さきほど若者の保守化という話をしましたが、私自身は今の若者たちも日本人が持っている0からつくり上げるDNAを受け継いでいて、そのDNAを目覚めさせたいということで、林にそれを託したんです。

林は、最初は頼りない小粒な人間です。でも、物語の中でリーダーとして成長していきます。それは、かつては世界で隆盛を誇っていた日本企業も、今はアメリカや中国の企業が覇権を握っていて、押されてしまっている状況があるわけじゃないですか。ただ、そんな状況でも、若者たちが自分たちに考え、自律的に動けば、新しい日本を創っていけるのだということを言いたくて、それを投影しているんです。

――若者たちの可能性が一つのテーマなんですね。

水之:そうです。嬬恋村で活動をする学生たちを見ると、その力は十分に備わっているということは感じ取れますからね。

――作中で彼らはいきなり縄文時代に放り投げられても、環境を受け入れてスポンジのようにいろんなことを吸収していくじゃないですか。

水之:そうなってほしいんです。ただ、まだまだ殻を破れていないようにも感じていて、そこがじれったいところですね。

――水之さんの中で本作の登場人物でお気に入りの人物は誰ですか?

水之:木崎という茶髪の女の子ですね。この子には特別な意味を持たせていて、こういうタイムスリップをすると、ほとんどの子は家に戻りたい、自分の時代に戻りたいと思うはずです。でも木崎はそうじゃない。現代には戻りたくないと言います。それは、彼女は貧乏な家の育ちで、格差社会の犠牲者だからなんですね。そういう、現代に帰りたくないという子たちを通して、社会の問題を浮き彫りにしたかったという点があります。

――ほとんどの人は「戻りたい」となりますが、必ずしもそういう人だけではない。帰りたくないという人も出てくる。

水之:現代が生み出した問題によって人生が犠牲になってしまっている人がいる。「帰りたくない」ということがせめてもの抵抗なんですよね。

――水之さんにとってこの『異世界縄文タイムトラベル』という作品は、現代社会への批判の意味も込められているのですか?

水之:そうですね。経済格差の犠牲になっているのは、中学生や高校生、大学生といった若者たちなんですよ。それは明確に表現しないといけないと思ったし、過去に舞台を移すことで、より現代の問題点を明らかにさせるという意図がタイムスリップという手法に込めました。

(後編に続く)

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