氷河の融解によってアラスカ沿岸部が直面している巨大津波のリスク(アメリカ)

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氷河の融解によってアラスカ沿岸部が直面している巨大津波のリスク(アメリカ)
氷河の融解によってアラスカ沿岸部が直面している巨大津波のリスク(アメリカ)

地球温暖化によりアラスカ州に巨大津波のリスク/ Pixabay

 日本時間の20日朝、アラスカでマグニチュード7.5の地震が発生し、76センチの津波が観測された。報道によると、じつは今年7月にもマグニチュード7.8の地震と24センチの津波が観測されているという。

 これらの地震による被害の情報は今のところない。しかし今アラスカは、地震がきっかけとなって観測史上最大の津波すら余裕で上回る巨大津波が発生するリスクに直面しているそうだ。

 その原因は地球温暖化による氷河の融解にあるという。
・巨大津波を警告する科学者からの書簡

 5月にアラスカ州天然資源省へ宛てられた科学者グループの書簡では、同州南沿岸部にあるプリンス・ウィリアム湾で大きな災害が発生する危険があると警鐘を鳴らしている。

 温暖化による氷河の縮小は世界中で観測されているが、それはアンカレッジから100キロ東にある湾内の「バリー峡江」でも同様だ。

 衛生画像の分析からは、峡江に流れ込む「バリー氷河」が解けて後退しており、周囲の山の斜面に断崖が露出していることが明らかになっている。

 このことからは峡江周辺の斜面でゆっくりとした地滑りがすでに起きていることがうかがえるが、万が一、岩石が突然崩れるようなことがあれば大惨事になりかねないという。

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image by:Lauren Dauphin/NASA Earth Observatory/USGS

・アラスカ過去最大の津波の11倍以上のエネルギー

 「最初は数値を信じられませんでした」と、書簡作成グループの1人である米オハイオ州立大学の地質学者ダイ・チュンリ博士はコメントする。

水面の堆積物の高さ、滑っている土砂の体積、傾斜の角度に基づく試算によれば、崩壊すれば1958年に起きたリツヤ湾大津波の16倍のガレキが生じ、それによるエネルギーは11倍以上に達します

 目撃者によって原爆のようだったと伝えられる1958年のリツヤ湾地震で発生した「リツヤ湾大津波」では、周辺の斜面が地滑りを起こし、海に崩落した土砂や氷塊によって最大524メートルという観測史上最大の津波が発生した。その11倍以上のエネルギーを持つというのだから恐ろしい。

 また最近でも、2015年にターン峡江の地滑りで、193メートルの津波が観測されている。

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image by:Briggs et al. , open letter to ADNR, May 2020

・地球温暖化が急激な変化を引き起こす

 書簡の説明によれば、ゆっくりとした地面の移動であっても、何かのきっかけがあれば急激な地滑りに変化することがあるのだという。

 そうしたきっかけには、豪雨、長期的な雨、地震などがあるが、地球温暖化による氷河の融解による急激な後退もその1つだ。

 「地形が馴染むには時間がかかります」と、書簡グループの1人で、非営利団体グランド・トゥルース・アラスカの地質学者であるブレットウッド・ヒグマン氏は説明する。

 「氷河の後退があまりにも速いと、周辺の傾斜をいきなり巻き込みます。そうなるとこうした変化に地形が少しずつ馴染むことができず、突然の大きな崩落につながります。」

 地滑りの危険性はかなり深刻だが、それがいつ起きるのかは分からない。しかし温暖化が進む現在、こうした氷河の融解による地滑りや津波のリスクは、アラスカだけでなく世界各地が直面していると推測できる。

 現在、アラスカ州天然資源省やアメリカ地質調査所など、いくつもの機関がプリンス・ウィリアム湾の変化に目を光らせている最中だ。

 この調査結果は、ADNRの​​Webサイトで入手できる。

References: GlacierHub / dggs.alaska/ written by hiroching / edited by parumo
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