破壊された歴史博物館に、ホームレス男性がなけなしのお金を寄付(アメリカ)
ホームレス男性がなけなしのお金を博物館に寄付 image credit:The Oregon Historical Society
今年5月に起きたミネソタ州ミネアポリスのジョージ・フロイドさん死亡事件は、全米規模で警察の過剰暴力と人種差別に対する抗議活動を拡大させるきっかけとなった。
現在では、デモが激しい暴動へと発展。特に、オレゴン州のポートランドでは爆竹や催涙ガス弾、火炎瓶などを手にした人たちの抗議活動が続いている。
オレゴン州の歴史博物館も破壊行為を受け、建物が壊された他、展示品が盗まれたり破損されるなど甚大な被害に見舞われた。
それを知ったある1人のホームレス男性は、なけなしの1ドル札をメモと一緒に博物館へ寄付。感動した博物館事務局長が、メディアや同博物館サイト『The Oregon Historical Society』で明らかにした。
Homeless man’s $1 donation lifts spirits as Oregon Historical Society deals with riot damage
・暴動により歴史博物館が被害に遭う
10月11日の夜、オレゴン州にある歴史博物館(The Oregon Historical Society 以下OHS)は、連日続いている抗議デモによる大規模な破壊行為に見舞われた。
OHSの入り口と広場を囲むドアは全て割られ、壁画の一部がペンキで覆われ、パビリオンに展示されてあったアフリカ系アメリカ人の200周年記念のキルトが盗まれたという。
View this post on InstagramA post shared by Oregon Historical Society (@oregonhistoricalsociety) on Sep 28, 2020 at 4:11pm PDT
OHSのサイトによると、幸いにも、後に警察がこのキルトを発見し無事に館内に戻されたということだが、受けた被害が甚大であることを事務局長のケリー・チムチュクさんは綴っていた。
盗まれたキルトの各正方形は、黒人の個人または歴史の瞬間を称えたもので、1970年代半ばにポートランドの15人の黒人女性により作成されたものです。
これまで当博物館では、白人至上主義への抵抗をテーマに取り上げたり、先住民の指導者や所持品に関連した歴史を特集するなど、オレゴン州の正直な歴史、つまり善、悪、醜悪さなどを伝えてきました。その結果、こうした被害に遭い、私たちは過去数か月間の抗議におけるメッセージの重要性、重大さを理解しています。
今回、暴動が幸いにもスタッフや訪問者がいない時間帯に発生したため、怪我人が出なかったことだけが救いです。修理には時間がかかるでしょうが、私たちは割れたガラスを片付け、ペンキをこすり洗いし、建物の安全を確認しながら、これを私たちの仕事の批評として受け止めることにしました。
全てのオレゴン人にとって、意味あるオレゴン・ストーリーを今後も伝えていくために、今後はOHSを支援する意欲と能力のある人々からの建設的なフィードバックを頂けると幸いです。
View this post on InstagramA post shared by Oregon Historical Society (@oregonhistoricalsociety) on Oct 14, 2020 at 10:21am PDT
・ホームレス男性、博物館に1ドル札を寄付
チムチュク事務局長によると、破壊行為がニュースで伝えられてから、多くの人がサポートのメッセージを寄せ、支援者からは修理のための寄付が続々と寄せられているという。
しかし、何より彼の心を震わせたのは、1人のホームレスからの寄付だった。
OHSの寄付を受け付けるフロントデスクに、ナプキンに書かれたメモと1ドル札を渡したのは、オスカーというホームレス男性で、メモにはこのように記されてあった。
View this post on InstagramA post shared by Oregon Historical Society (@oregonhistoricalsociety) on Oct 12, 2020 at 1:08pm PDT
こんにちは。私はホームレスなのであまりお金がありませんが、建物が破壊されたのを知って。少しでも役に立ちたいと思い、1ドルを寄付します。これは、空き瓶・空き缶収集で得たなけなしのお金です。
以前、パンデミックの前に博物館を無料で案内してもらったことがあり、これはそのお礼です。オスカーより。
チムチュク事務局長は、メディアでこのように話した。
これまでOHSは、長年にわたり実に多くの方々からの100万ドルもしくはそれ以上の寛大な寄付を頂いてきました。
今回も、暴動を受けた建物の修理費用のためにと、暴動の翌朝から多くの人に寄付を頂いております。ですが、このオスカーというホームレス以上の特別な1ドルの寄付はありません。事務局長として、彼の思いやりはとても心に響きました。
同時に、このような困難な時期にも関わらず、温かい支援のメッセージを下さった全ての人々のご厚意に、深く感謝いたします。
・リサイクル推進団体がホームレスに刺激され、OHSに寄付
オレゴン州の空き缶・空き瓶のリサイクル推進団体『Bottle Drop』は、オスカーさんがボトルを集めてリサイクルしたセンターを運営しているが、この1件を知り、彼の行為にインスパイアされ、新たなプログラムを開始した。
それは、「Bottle Dropのリサイクルセンターにボトルや空き缶をリサイクルしてくれた誰でも、OHSに寄付することができるようにする」というものだ。
実は、Bottle Dropは今年4月と5月には、顧客がオレゴン州のフードバンクに寄付できるプログラムを実施しており、9月には山火事の修復に同様のプログラムで6万ドル(約628万円)を寄付したそうだ。
地域広報課マネジャーのジョエル・シェーニングさんは、「オスカーさんの行為に触発されたので、是非とも寄付を協力したい」と述べており、同団体はOHSに5000ドル(約52万円)を寄付する計画であることを明かしている。
written by Scarlet / edited by parumo