「黒人は警官に殺されやすい」は本当か?BLMの数学的考察 (2/3ページ)
この事件によって有色人種コミュニティの怒りが爆発し、大規模な市民運動に発展していったわけだが、「そもそも警察官が黒人の命を軽く扱っている、というのは本当なのか?」と疑問を唱える人もいた。
確かに、アメリカの警官は引き金を引きたがる傾向がいささか強い。ひょっとすると黒人の容疑者がうろついているのを見ると、引き金を引きたくなるのかもしれない。
しかしまた、アメリカの黒人にとって最大の危険が…そのう…ほかの黒人であることも間違いない。黒人が黒人に対して行う殺人は、平均すると年間4000件以上発生している。アメリカの警官に殺された黒人の数は――正当か否かはさておいて――年間100人を少し超える程度である。
これはイギリスの右派ジャーナリストが大衆紙に寄せたコメントである。
警官が黒人の命を軽視しているように見えるが、実際には黒人同士の争いで殺される黒人の方がずっと多い。つまり、アメリカの黒人が街で恐れるべきなのは、白人警官に職務質問されることよりも、同じ黒人と出くわすことだろう、と言いたいわけである。
このジャーナリストの言い分を、イェーツ氏は「2017年に犬が殺したアメリカ市民は40人だったが、熊は2人しか殺していないから、熊より犬の方が残忍だ、と言えるだろうか(なぜなら、アメリカには熊よりも犬の方がはるかにたくさんいるのだから)」と一蹴している。
たしかに、公表されている2015年のデータを見ると、アメリカの警察官が殺した市民の数は1146人で、そのうち黒人は307人、白人は584人だった(残りの255人はどちらでもないか人種不明)。一方で黒人による黒人の殺人の被害者は2380人である。ジャーナリストのいう「年間4000件」はかなり盛った数字だということはさておき、これだけ見ると彼の言い分(2380:307)は一見正しく見える。
しかし、アメリカの黒人市民は4020万人以上いるのに比べて、警察官は63万人あまり。4020万人が2380人を殺害するのと、63万人が307人を殺害するのとでは、一人当たりにすると8倍以上の違いが出る。