疫病退散と疫病で亡くなった方の鎮魂を願う「京都祇園祭」のおこり

心に残る家族葬

疫病退散と疫病で亡くなった方の鎮魂を願う「京都祇園祭」のおこり

今年は新型コロナウイルスの感染拡大防止の為、催事が次々と中止になった。楽しみにしていたイベントが中止、または延期になってしまったという方も多いのではないだろうか。各地の伝統的なお祭りの多くも同じく、今年は自粛のため中止を余儀なくされてしまった。なぜお祭りが行われるのだろうか。私たちがお祭りと聞くと屋台や花火といった賑やかで楽しいものを想像する。しかしお祭りが行われる本来の意味は、言葉どおり神仏や先祖をおまつりすることである。またそのために行われる儀式のこともお祭りと呼ぶ。

■祀りから祭りへ 京都祗園祭のおこりとは

世界各国には様々なお祭りが存在している。そしてお祭りには風習、文化、国民性が反映される。豊穣を願う収穫祭、イエスキリストの復活を祝福する復活祭、お釈迦様の誕生を祝福する花まつりなど行われる由縁も様々である。

そして日本には疫病退散、疫病で亡くなった人々の鎮魂を願う有名なお祭りがある。夏に京都で行われる京都祇園祭である。今回は京都祇園祭がどのように起こったのかご紹介する。

■平安時代の疫病がきっかけで始まった京都祇園祭

京都祇園祭は日本三大祭のひとつである。京都祇園にある八坂神社の祭事であり、7月1日から1カ月にわたり行われる。京都祇園祭の所以は平安時代前期にまでさかのぼる。祇園をはじめ全国で疫病が流行し、多数の感染者と死者が出た。そこでこの事態を治めるために御霊会という儀礼を行った。

当時の人々は疫病流行や天変地異によって思いがけない理由で亡くなった人々の魂が怨霊になり、現世の人間に災いをもたらしていると考えたのである。このような魂を鎮める儀式が御霊会と呼ぶ。御霊会では当時の日本に存在していた国の数を表す66本の矛(ほこ)を立て、牛頭天王(ごずてんのう)、スサノヲノミコトなどの神様を祀った。御霊会は疫病が流行する度に行われる不定期なものであったが、次第に毎年行われるようになった。戦乱などで途絶えた時もあったが、2019年には1150回目を迎えている。

■「66本の矛」と「牛頭天王」とは

この牛頭天王がどのような神様か説明したい。牛頭天王は仏の薬師如来が化身した姿の名称である。日本において日本の様々な神は実は仏が姿を変えており、本質は同一であるという捉え方をしていた。この牛頭天王も薬師如来と同じ役割を持ち、病気平癒のご利益があると信仰されていた。神社にお祀りするため牛頭天王という神の姿を採用したのだろう。

また66本の矛の役割は長い矛先を天に掲げ、厄が地上に降りてくる前に矛へ乗り移らせるためのものである。矛は年月を経ることにより山車と一体化、それに装飾が加えられ、現在山鉾と呼ばれる。7月17日、24日に山鉾が京都の街を移動する山鉾巡業は祇園祭のハイライトである。

■今も昔も変わらない救済を願う神仏への信仰心

だが皮肉にも今年はこの京都祇園祭も感染拡大防止のため行われなかった。平安時代という医学がまだ発達していない時代、神仏に祈る手段は必須だったのだろう。しかし、文明が進んだ現在でも未曽有の出来事を前になすすべがない状態である。疫病をおさめるとされる妖怪アマビエのグッズが作られているところを見ると、救済を求めて神仏に祈りたくなるのは今も昔も変わらないのかもしれない。来年こそは京都祇園祭をはじめ、様々なお祭りやイベントが行われていることを願うばかりである。

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