すべて怖い『35歳の少女』鈴木保奈美、本格演技派として再ブレイクか
柴咲コウ(39)が主演を務めるドラマ『35歳の少女』(日本テレビ系)が怖い。第1回から目が離せないのだが、すべてが怖い。なのに見てしまう!
私のなかで主役は、25年ぶりに目を覚ました望美役の柴咲コウにあらず。常に氷のような表情で娘を見張る母・多恵役の鈴木保奈美(54)である。
鈴木が「とんぼのめがね」を歌うシーンは、『私たちはどうかしている』(日本テレビ系)の観月ありさ(43)の前例があったため、実はブレーキをわざと壊したのは母親という闇深い展開の匂わせだと勝手に勘繰っていた。ところが10月31日放送の第4話で、その歌の理由が判明。前を進む象徴であるとんぼに、家族の仲が良かった頃と、長い介護生活の絶望を救われた思い出が詰まっているという、普通にとても心温まる話であった……。
■わずかな動きで感情を表現
しかし、口元をふっと歪めただけで、うれしさだったりとまどいだったり、母の気持ちが分かる鈴木保奈美のすごさよ。彼女、こんなにうまかったっけ!? 失礼ながら『東京ラブストーリー』(フジテレビ系)のときは、決して上手と思わなかった。まさか50を過ぎて、彼女を演技派として認めることになろうとは。
第4話で、殴られても蹴られても表情を変えずターミネーターばりに半グレの若者に向かっていく姿は、すごみすらあった。鈴木保奈美は『SUITS』(フジテレビ系)も良かったし、再ブームが来そうな気がする。
そして、楽しみだったヤサグレ坂口健太郎(29)。彼に唯一の癒しを求めていたのだが、ヒゲの坂口健太郎は予想以上にエロく、ドキドキするので今のところ癒しになっていない。
私の唯一の癒しは、望美の妹・愛美役の橋本愛(24)である。「好きな人に対して、それ絶対やっちゃダメ」的な行動を片っ端からやっていく愛美。空回りしながら、唯一本音を周りに叩きつける彼女に、空気穴のような風通しを感じてホッとする。
■King Gnuの主題歌も怖い
繰り返しになるが、ほかの登場人物は全員怖い。父親役の田中哲司(54)は優しいけれど自分の首を絞める行動しかしないし、富田靖子(51)はそもそも存在が怖い。息子役の竜星涼(27)は引きこもりっぷりがうますぎて、『同期のサクラ』(日本テレビ系)の菊ちゃんとのギャップがすごくて怖い。
登場人物以上に怖いのは、主題歌である。毎回ラストに柴咲コウのアップと「35歳の少女」というタイトルが重なり、「この世界の誰もが~♪」と、あまりにも繊細で悲しくて美しいKing Gnu・井口理のハイトーンボイスが流れる。この曲と白黒の予告映像によって、時間が逆行していく感覚と、アンハッピーエンドの予感ばかりが膨らんでいくのである。
望美はもう一度眠りについてしまうのではないだろうか。怖い。予想が外れますように。(田中稲)