切ない…「子育て幽霊」墓の中で生まれた赤子のため、夜な夜な飴を買いに来る母の愛

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切ない…「子育て幽霊」墓の中で生まれた赤子のため、夜な夜な飴を買いに来る母の愛

現代では残念なことに、赤ん坊や幼な子の育児放棄・虐待のニュースが、珍しくなくなってしまいました。

でも時代を遡ってみるとどうでしょう。自分が死んでから墓の中で生まれた赤ん坊に与えるため、幽霊になって、夜な夜な飴を買い求めに店に訪れる女性の幽霊がいた……

という、怪談でありながらも切ない伝承が日本各地に存在しているのです。

落語の題材や仏教の説話にもなった「子育て幽霊」の話をご紹介しましょう。

子育幽霊・飴買い幽霊のお話

「子育て幽霊」「飴買い幽霊」の話は、ストーリーや結末に多少の違いはあれども、日本全国に伝承があるお話です。

子育て幽霊図(写真:wikipedia)

その中から、代表的な話をご紹介しましょう。

真夜中に飴屋の戸を叩き「アメを売って…」

今は昔。

ある夜中のこと、店じまいをした「飴屋」の雨戸を、ホトホトと叩く音が。

誰か来たのかと、主人が扉を開けてみると、そこには真っ青な顔をし、ボサボサの長い黒髪の女性が立っていました。

「アメを売ってくださいな」……と、小さな声で囁きながら、一文銭を差し出す女性。

女性の様子を怪しみながらも、主人は飴を売り「どこから来たんだい」と尋ねましたが、女性は何も答えずに夜の闇の中へと消えていきました。

夜の闇(写真:photo-ac)

墓の中から赤ん坊の泣き声が

翌日も、その翌日も、夜中になると飴を買いに来る女性

7日目の夜になり、「もうお金がないのですが……これで飴を売ってくれませんか」と羽織を差し出しました。

不憫に思った主人は、飴を売り、その羽織を店先に干したのでした。

翌日、通りがかりのある男性が「その羽織は、亡くなった自分の娘のもので、棺桶に入れのです。どこでどう手に入れたのですか?」と尋ねてきました。

飴屋の主人からことの経緯を聞いた男性が、急いで墓地に駆けつけたところ、娘を葬った土の中から、赤ちゃんの泣き声が……

棺桶を掘り起こし開けると、死してなお、生まれたばかりの赤ん坊を抱きしめ飴をあげている娘の亡骸が見つかったのでした。

 女性が身ごもったまま死ぬと、墓の中で生んだ赤子を連れ幽霊になる「産女(うぶめ)」信仰もある (写真:wikipedia)

……枝葉末節は、地方によって異なりますが、大筋はこのような内容です。

幽霊になっても、生まれた赤ん坊を守りたいという、母の切なる思いが伝わってくる切ないお話ですね。

飴を食べて生き延びた赤ん坊はどうなったか

 京都・六道珍皇寺の高僧になったという説も(写真:wikipedia)

子育て幽霊の話はいろいろなバリエーションがあり、墓の中で生まれ飴を食べて生き延びた赤ん坊のその後の話にも諸説あります。

その多くは、お寺に引き取られ修行を積み、大人になって高僧となった……というものです。

京都東山には幽霊に飴を売ったお店が

 「みなとや幽霊子育本舗」(写真:wikipedia)

ちなみに、京都・東山には、幽霊に実際に飴を売ったとする450年以上の歴史を持つ「みなとや幽霊子育飴本舗」があります。

同店の由来書の中には、

「此の児八才にて僧となり修行怠らず成長の後遂に、高吊な僧になる。
寛文六年三月十五日、六十八歳にて遷化し給う。

されば此の家に販ける飴を誰いうとなく幽霊子育ての飴と唱え盛んに売り弘め、果ては薬飴とまでいわるゝに至る。」

という一文があります。

ちなみに、同じく京都の立本寺でも子育て幽霊の伝承があり、墓から助けられた子は出家し、立本寺第二十世・霊鷲院日審上人となったとしています。

京都・立本寺(写真:wikipedia) 

子育飴は琥珀色の飴

 幽霊子育飴(写真:みなとや幽霊子育飴本舗)

京都の東山区「みなとや幽霊子育飴本舗」では、「幽霊子育飴」を販売しています。

伝承では、幽霊が買いに来た飴は「水飴」だったそうですが、現在ではこはく色の固形の飴として販売されています。

材料は、麦芽水飴と砂糖だけの添加物は一切入っていない飴で、どこか懐かしく優しい味わい。

小さなお子さんでも安心して食べることができる飴です。

墓の中で生まれたのにもかかわらず、無事に発見され高僧になったことから、幽霊子育飴は、「食べると出世する縁起のいい飴」ともいわれ、京土産としても人気があります。

 幽霊子育飴(写真:wikipedia)

みなとや幽霊子育飴本舗HP

日本で一番古い飴屋は「六道の辻」にあり

 六道珍皇寺山門と門前「六道の辻」の碑(写真:wikipedia)

このみなとや幽霊子育飴本舗のそばにあるのが「六道の辻」

仏教における「六道」とは、人間が死んだ後に行く、地獄界・畜生界・餓鬼界・修羅界・人間界・天上界の6つの世界のことです。

その六道が交わっている六道の辻は、あの世とこの世の境目といわれています。

また、六道の辻は平安京・三大葬送地の一つ鳥辺山への入り口

そんな特別な土地柄もであることも、子育て幽霊の伝承が現代まで守られてきた理由の一つではないでしょうか。

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