人をも殺す猛毒を持つ「タテガミネズミ」は植物の毒を利用していた
植物の毒を利用して身を守るタテガミネズミ image by:Kevin Deacon / WIKI commons
可愛らしい顔で、フッサフッサの毛皮におおわれているとなれば、もふもふっと撫でてみたくなるのが心情だが、そんな見た目に騙されてはいけない。
「タテガミネズミ(学名 Lophiomys imhausi)」はちっちゃな体に生物兵器のような猛毒を仕込んでいるからだ。
この毒は自らが分泌しているものではない。針のような毛に植物の毒を塗りつけて利用しているというのだから驚きだ。
・植物の猛毒を利用するタテガミネズミ
尻尾を含めれば体長53センチほど。その名の通り、頭頂部から背筋に沿って尾の基部まで、長さ8~9cmもある剛毛のたてがみを持つタテガミネズミはどこかスカンクに似た風貌をしており、エチオピア・タンザニア・ウガンダ・ケニアなど、アフリカ東部の乾燥した森林地帯の穴の中で暮らしている。
危険を感じるとたてがみをフウッと逆立てて威嚇。うっかりその毛に触れようものなら大変なことになる。特殊な構造をした毛からは「ウアバイン」という強力な毒(心臓の薬でもある)が仕込んであるのだ。
哺乳類にしては珍しい猛毒の秘密は、その食生活にあるようだ。
アフリカ東部から中部にかけて生えているキョウチクトウ科「ポイズンアローツリー(学名 Acokanthera schimperi)」の樹皮は、ソマリ族が毒矢の毒の原料として使用していたほどの強い毒を含んでいる。普通の人間がこの木を口にすれば中毒を起こしてしまうが、タテガミネズミにはまったく影響がない。
タテガミネズミは樹皮をかじり、ウアバインと唾液の混合液つくって、自らの毛に塗りつける。毛は中空になっていて毒が沁みこみやすくなっており、タテガミネズミを食べようとする捕食動物は、この猛毒にやられることとなる。

特殊な構造の毛から分泌される猛毒は、有毒な木から手に入れたものだった毒をしみこませたタテガミネズミの毛 image by:Sara B. Weinstein
このことは以前から仮説として提唱されていたが、今回『Mammalogy』(11月17日付)に掲載された研究で、それが正しかったことが確認されたとのことだ。
本当に木を食べて毒液を作っているかどうか確認するために、米ユタ大学をはじめとする研究グループは、捕獲したタテガミネズミ25匹を飼育。さらに仕掛けカメラなどを利用することで、その生態を1000時間にわたり観察。実際に樹皮を食べて毒を集めていることが確かめられた。
African crested rat applies its poison
・タテガミネズミは一夫一婦制。社会的動物でもあった
この研究では、タテガミネズミが非常に複雑な社会生活を送っていることも明らかになっている。カゴに2匹入れてみると、なんと喉をゴロゴロ鳴らして、お互いに毛繕いを始めたというのだ。
「これまで単独行動をとると考えられてきたので、とても驚きました」と、米ユタ大学のサラ・ウェインステイン博士は語る。
博士によると、ネズミと名付けられているが、観察されたその様子は「ネズミの姿をした牛」だったそうだ。
猛毒を体に宿しながらも、かなり平和的な草食動物で、ほとんどの時間はエサを食べることに費やしているのだ。そして時折、お互いに毛繕いをしたり、壁に登って巣で眠ったりする。
どうやら一夫一婦制であるらしく、大きな体・長い寿命・繁殖率の低さといった、同じような習性を持つ動物に共通して見られる特徴があるとのこと。つがいのタテガミネズミは、半分以上の時間を寄り添って過ごしてたという。
また子供もしばらくは一緒に生活しているらしいことや、鳴き声を使ったコミュニケーションを交わしているらしいことも明らかになっている。
References:attheu/ written by hiroching / edited by parumo