医師であり経営者でもある「開業医」 医療をビジネスとして成立させるために必要なことは? (2/2ページ)
■「赤字なし」で経営を実現するために行った決断とは?
田畑氏がこれまで明生会の事業を拡大できてきたのは、彼の経営手腕によるものだ。しかし、常に順調な道を歩んできたわけではない。
開業当初は億単位の借金を抱え、返済に追われている状態が続いていた。それでも無茶をして次々と開業していき、借金を増やしながら収益も拡大させ、返済後には黒字になっていた。
しかし、それからしばらくしての17、18期に一度赤字に転じたことがあったという。
それは富里市に開業したクリニックの経費負担増が原因だった。ここは施設拡大計画の一環として設立された施設で、人工透析施設のほか、病状が重い患者さんのための入院施設も完備していた。入院施設を完備するということは、24時間体制で医師と看護師を置き、さらに入院食を提供するための調理担当や栄養士も必要となる。経費が膨れ上がるのだ。
ところが、この富里には思ったほど入院患者が入らず、経費が経営を圧迫するようになる。そして、田畑氏は苦渋の決断を下す。病棟の閉鎖だ。入院が必要な患者さんには他の施設に移ってもらい、職員たちの一部は辞めてもらうことになった。初めてのリストラである。
経営者として「この時だけはやむを得ずの判断で、今も忘れられません」と振り返る。結果的に赤字を抜け出し黒字に戻るわけだが、田畑氏は「経営者としての一つステップアップできた時期だった」とつづっている。
◇
本書はどのように明生会の事業を拡大してきたかをつづっていると同時に、開業医として、そして経営者としての田畑氏の想いがつづられている。
これからさらに高齢化が進み、介護施設の需要も増えてくるだろう。その中で、医療・介護に包括的に取り組んできた田畑氏の経営術は注目を浴びてくるはず。氏はエピローグでこう述べている。
医師は頭でっかちになりがちで、医療経営のことなどあまり考えたこともない人が多いのです。腕がいいから、知識が豊富だから、といっても、開業したときに患者さんに来てもらえなければ、事業を続けることはできません。
開業した以上、自分は経営者であり、商店街のお店と同じだということを意識しなければなりません。(p.207-208より引用)
開業医として自分のクリニックを経営している人はもちろんのこと、医療業界ではない人もどのように事業を拡大していけばいいのか、参考になる一冊だ。
(新刊JP編集部)