医師であり経営者でもある「開業医」 医療をビジネスとして成立させるために必要なことは? (1/2ページ)
開業医といえば、花形の仕事だ。年収は高く、安定しているというイメージを持っている人も少なくないだろう。
しかし、開業医は経営者でもあることを忘れてはならない。特に医療法人化し、複数の医療施設を開設するとなると、経営者としての経営手腕も問われてくるだろう。では、その実情とは一体どんなものなのか。
『ドクター・プレジデント』(幻冬舎刊)は医療法人社団明生会理事長の著者・田畑陽一郎氏が、これまでの半生を振り返りながら、どのように自分が医療法人を経営し、事業を拡大してきたかを赤裸々に明かした一冊だ。
わずか一代で7つの医療施設、4つの介護施設を開設し、包括的なネットワークを築き上げた田畑氏の独白から、彼の経営術を垣間見ることができる部分をピックアップしよう。
■開業医から「経営者」になるのはいつか?1945年に生まれ、海外留学、大学病院の勤務を経て、1991年に千葉県東金市に人工透析を専門に行うクリニックを開業。その後、千葉県の様々な場所に医療施設を開設してきた田畑氏だが、実は開業当初より「チェーン店化」を考えていたという。
人工透析はいわば永続的な治療だ。そのため患者からすれば治療に通うことも大きな負担になる。クリニックが増え、病床が増えれば、より治療を受けやすくなり、一人でも多くの人を救うことができる。
田畑氏は2年目に2つ目の施設を立ち上げ、それに伴い医療法人化を行った。個人開業の医院が施設を増やすためには法人化をした方が、メリットが大きいためだ。
こうして次々に新たなクリニックを開業していくわけだが、ここでぶつかるのが経営者としての課題だ。
自分の下に集まる総勢100人以上の職員の生活を、田畑氏は背負っている。赤字倒産などはできない。組織の安定が必要だ。それまで、医師としての勉強はしてきたが、経営の勉強はしてこなかった。
そこで、田畑氏は経営セミナーに通ったり、経営者たちの書籍を読み漁り、経営者とは一体どういうものかを身につけたという。こうした不断の努力を経て、開業医から経営者へと変わっていったのである。