新型コロナウイルスの全症例をゲノム解読、世界をリードして変異種に備えるアイスランドの予防対策

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新型コロナウイルスの全症例をゲノム解読、世界をリードして変異種に備えるアイスランドの予防対策
新型コロナウイルスの全症例をゲノム解読、世界をリードして変異種に備えるアイスランドの予防対策

コロナ全症例のゲノム解析を行っているアイスランド/iStock

 先日、世界保健機関(WHO)は、変異種に対応するために、世界各国がゲノム解読に取り組む必要があると訴えた。

 だがアイスランドでは、既に10か月前から国内で報告された新型コロナウイルス感染症の全症例のゲノム解読を解析している。その目的はすべての症例を追跡し、危険な株が捜査網をすり抜けてしまうことを防ぐことだ。

 英国や南アフリカなどで危険な変異種の出現が確認されている今、この世界をリードする戦略は決定的に重要なものになるかもしれない。

・新型コロナウイルスのゲノム解読でいち早く変異種を特定

 アイスランドの首都レイキャビクにあるバイオ製薬研究機関「deCODE Genetics」では、同国保健当局の要請を受け、10か月前から国内で報告されたあらゆる新型コロナ感染症を解析している。

 ウイルスのゲノム解読は比較的短時間で完了する。

 解読にあたっては、まず電磁ビーズを使い各サンプルから余計なものを除去しつつ、DNAを取り出さねばならない。そしてこれを解読がしやすいよう処理して、シーケンサーという読み取り機で塩基配列を解読する。

 ウイルスの解読だけなら、3時間もあればいいという。DNA抽出からの全プロセスでも1.5日ほどで終わる。

 これまでdeCODE Geneticsは、アイスランドで報告された6000症例のすべてを解読し、463種の変異種(ハプロタイプ)を特定してきた。

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NIAID/Wikimedia Commons/CC BY 2.0

 こうした取り組みは、感染症の流行具合を判断する重要な指標になり、状況に応じた的確な感染防止策を講じる手助けをしてくれる。

 たとえば、昨年9月半ばから始まった感染拡大の波は、当初フランスからやってきた観光客のウイルスではないかと疑われていた。

 しかし解読結果から、実際にはパブの利用客が大きな原因になっていることが明らかになり、これを受けて保健当局は、首都にあるバーやナイトクラブの営業禁止に踏み切った。



・世界をリードするアイスランドのゲノム解読

 イギリス、デンマーク、オーストラリアなど、ほかにも同じ試みを進めている国はあるが、アイスランドほどのレベルには達していない。

 日本でも先日、海外に滞在歴がなく感染者との接触も確認されていない静岡県の男女3人が英国で流行中の変異ウイルスに感染していたことが報じられた。

 これは1か所の保健所の検体を全て調べた結果明らかになったそうで、静岡県では今後全ての保健所に対して検体の分析を行うという。

 アイスランドが世界トップレベルのウイルスゲノム解読を行えているのは、「deCODE Genetics」というゲノム解読の専門機関の存在が大きい。

 1996年に設立された同研究所は、これまで最大規模の遺伝子研究を行ってきたことで知られている。

 たとえばアイスランド人2500名の全ゲノムを解読してがんのリスク因子を調べたり、同国人口の3分の1の遺伝子プロファイルを調査したり、あるいは魚のニオイに関する少々ユニークな研究もある。



 普段この研究所で扱っているのは34億組のヌクレオチドを持つ人間のゲノムだ。そうした研究に比べれば、たかだか3万程度のヌクレオチドしかない新型コロナのゲノム解読は簡単だという。


コロナウイルスのゲノム解読
iStock

・変異ウイルスの違いは微妙なもの

 だが、こうした試みにもかかわらず、科学的な発見という意味ではそれほどの成果はあがっていないのが現状だ。

様々なパターンを持つ変異ウイルス同士で違いがあったとしても、それほど明白なものではありません。わざわざ取り上げるほどはっきりしたものではないのです

と、deCODE Geneticsの設立者カリ・ステファンソンは述べている。

References:Iceland Genetically Sequences Every COVID-19 Case in World-Leading Strategy/ written by hiroching / edited by parumo
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