自民党政権の断末魔!二階幹事長が菅総理を切り捨てるXデー【全文公開】
日に日にコロナ感染状況が悪化する中、ようやく国会が開かれたが、世間はもはや菅政権には希望を見いだせず、見切りをつけ始めた——。その現実が、急降下する支持率に如実に表れる中、自民党内部でも「黒幕」が動き出し、断末魔の「Xデー」が浮上してきたのである。
「今や自民党内で数少ない政局の読み手となっている二階俊博幹事長(81)は、自らが主導、誕生させた菅義偉(72)政権に限界が近いことを読み切っているように思える。両者は昨年12月14日の“密”を批判された『ステーキ会食』以前は頻繁に会っていたが、それ以降はめっきり会う回数が減った。菅総理のコロナ対策も後手後手に回り、国民のイラだちは高まってきている。すでに自民党内からは『菅降ろし』の声も出始めた。二階氏とすれば、菅総理への引導の渡しどころを模索し始めていることは間違いないだろう。そのタイミングを間違えると、火の粉は自分に降りかかってくる。二階氏としては、幹事長として生き残るためにも、ここ一番の勝負どころに立たされているということでもある」
これは二階氏と気脈を通じる自民党閣僚経験者の弁である。
なるほど、誕生した菅政権は「デジタル化」「携帯電話料金値下げ」などの政策は掲げたが、一方で「日本学術会議」「桜を見る会」の不透明ぶりに対する明確な答弁が欠け、追い打ちをかけるように吉川貴盛元農水相(70)の収賄罪「鶏卵疑惑」まで発覚。政権の勢いには、急速にブレーキがかかっているのだ。
そして経済優先の姿勢から自ら旗を振ったGoToキャンペーンは休止に追い込まれ、あげくは緊急事態宣言も後手後手に回った形になっている。案の定と言うべきか、政権発足わずか3カ月余りで不支持率が支持率を上回り、その支持率は下落の一方。再浮上の手だてが全く見当たらないのが現状だろう。
自民党閣僚経験者は、こう続けた。
「菅総理は緊急事態宣言発令後の記者会見で『1カ月後に(コロナ感染拡大の)事態を改善させる』と明言、その後の朝日新聞のインタビューでも『1カ月で絶対阻止』と語ったが、これは〝公約〟になる。全ての責任が菅総理ひとりにあるわけではないが、言葉に反して感染拡大が収まらぬとなれば当然、政治責任を問われることになる」
こうした中、常識的に見れば、内閣支持率が30%を切った時点で、政権には赤信号が灯るとみていいだろう。ために、3月末までに来年度予算案を成立させ、それを花道に退陣というケースも想定できる。これは菅政権、最短の退陣シナリオである。
自民党議員、政治部記者などからの話を総合してみると、前任の安倍晋三氏と比べて官邸、側近にまとまりがなく、官僚組織からの強力なサポートも欠いている、との指摘があるのだ。
この弱体化した政権に対し、政局に抜群の嗅覚を持つ二階幹事長が自らの権力温存のために政権交代のタイミングを考えるのは、至極当然のことと言える。
政治部デスクが言う。
「見ていると二階幹事長は、菅総理の政権運営に直接注文をつけることはしていない。助け舟を出すこともしないと、もっぱらです。安倍政権時とは全く逆の『党高政低』となっている党の高みからジッと菅総理を見ている、といった具合です。一方で、実はそうした中でも、早くから両者の間にはいくつかのズレが生じていました」
昨年10月に菅総理の意向を受けた西村康稔経済再生相(58)がコロナ感染拡大防止のためと、年末年始の17連休案を発表。ところがこれに二階氏がかみつき、菅総理もやむなく矛を収めざるをえなくなったことがある。
菅内閣支持率が下がらぬうちの、1月早々の衆院解散も可能とテレビで口にしている二階幹事長にしてみれば、17連休では解散のタイミングがズレる。そんな不満を持ったことが、背景にはあった。
「菅総理は、解散権は総理にあるのに、幹事長がこれに言及したことに不快感を持ったとされています。その後も菅総理がGoToトラベルをストップさせたことに、今度は二階氏が反発したともっぱらです。GoToキャンぺーンの委託先は全国旅行業協会で、この協会の会長は観光族のドンでもある二階氏。おもしろかろうハズはありません。また、収賄罪で在宅起訴、議員辞職した『鶏卵疑惑』の吉川元農水相が元二階派の重鎮だっただけに、菅総理としてはいい迷惑だった。その他にも、菅総理にとって天敵であり大嫌いな小池百合子東京都知事(68)との会食の場を作って同席させたり」(政治部デスク)
例の「ステーキ会食」参加も、菅総理は気が進まなかったのに、
「二階氏の声がけに断り切れなかったことを、あとで舌打ちしていたとされています。要するに、菅総理とすれば『総理のオレを軽く見るな』の思いがあるということでしょう。今の両者は一枚岩とはほど遠い。むしろ、冷戦状態に見えます」(政治部デスク)
菅総理にすれば、自民党内からすでに菅降ろしの声も出て、支持率30%切りも予想できそうな現実を前にして、本来なら衆院の解散で勝負に出る手がある。ところが一にも二にも、このコロナ感染拡大が沈静化、終息への兆しが出ないかぎり、解散を打てる環境にはならない。
一方で、選挙への追い風としたい東京五輪も開催の見込みが立たず、日程的に見ても、7月に東京都議会選挙があることで、その前後3カ月ほどは、最大の支持母体である創価学会の選挙活動が難航する公明党が反対だ。となると、9月の自民党総裁任期切れ近くの「追い込まれ解散」しか選択肢は見当たらなくなる。
とはいえ、そこにたどりつくまでにも、高いハードルがそびえている。4月25日投開票の2つの補選である。ひとつは議員辞職した吉川元農水相の衆院北海道2区で、もうひとつが羽田雄一郎氏の(コロナ感染による)死去に伴う参院長野選挙区である。
ところがこの2補選、吉川汚職ショックでビビッた結果、北海道からは撤退を表明し、不戦敗が決定。長野も立憲民主党の牙城で、自民党に勝ち目はないとみられている。そこで、案が練られているようだ。イヤイヤ菅総裁誕生に乗った自民党主要3派のうちの安倍前総理出身派閥、細田派幹部は、次のように内情を明かす。
「補選2敗となれば、10月までには行われることになる衆院選がいよいよ苦しくなる。昨年12月に党がやった調査でも、次の衆院選は40議席減との予測が出ていた。結局、党の『表紙』を替えて臨むしかない。そして補選後、総裁選を前倒しする。しかしここでは前回のように二階氏の主導で、ということにはならない。細田、麻生、竹下の3派が中心となって主導する形になる可能性が高い。こうした3派主導の新総裁誕生に二階派も同調ということになれば、二階氏には五分、幹事長続投のセンが残る。自民党には選挙のプロが少なくなっている。安倍政権下で衆参の選挙を連勝に導いた二階氏の手腕は、無下にはできないということだ」
一方で、4月25日の補選に総選挙を抱き合わせるのは極めて難しいとみられており、
「もし総選挙敗北となれば、大政局になる。自民党が解散、総選挙を打てるのは新総裁の下で、と考えている党所属議員が圧倒的に多い」(細田派幹部)
かくてコロナ終息の兆しが明確にならないかぎり、4月25日の補選が「Xデー」となりかねず、菅総理にとっては鬼門となりそうなのだ。
菅総理は時に泥水をすくって飲み、雌伏を経て総理のイスを手に入れた人物ではなかった。ためか、この国難に際してもトップリーダーとしての気迫、危機感、覚悟の希薄さは歴然としている。参謀として、より持ち味が生きるタイプとなれば、「やはり野に置け蓮華草」ということか。
二階氏には、自ら担いだ政権を切り捨てなければならない局面が近づいている。それは非情に映る。しかしこの非情さも「国家、国民、党のためで、やむをえず」で乗り切れるのが政界である。
政界に仁義なし。とりわけ、政権がかかった権力争いには、仁義の入る余地はない。「今日の友は、明日は敵」がまかり通るのである。
菅政権の「Xデー」に二階幹事長はどんな手を繰り出し、自らの生き残りを懸けるのか。変幻自在、奇略の“二階劇場”が見られるのか否か。
(政治評論家・小林吉弥)
※「週刊アサヒ芸能」1月28日号より