2月7日は北方領土の日。なぜその日に制定されたの?その理由は日露外交史にあった

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2月7日は北方領土の日。なぜその日に制定されたの?その理由は日露外交史にあった

カレンダーを見ていると、ふと「北方領土の日」があることに気づきます。

「ねぇ、2月7日のこれって何の記念日なの?」

そもそも北方領土って何なの……という質問もあったので、今回は2月7日「北方領土の日」について紹介したいと思います。

日露外交の夜明けは、北方領土の国境決定から

北方領土。Wikipediaより。

北方領土とは、文字通り日本の北方に広がる領土のことで、日本政府の見解では北海道の北東にある択捉(えとろふ)島国後(くなしり)島色丹(しこたん)島、そして歯舞(はぼまい)群島を指します。

昭和20年(1945年)以来、ロシア(旧ソ連)が武力によって占領・実効支配していますが、日本政府はその返還を求めて続けています。

ロシアに奪われてしまった北方領土の返還を求める国民の世論を盛り上げるために制定された「北方領土の日」が2月7日となったのは、江戸時代末期の安政元年(1855年)12月21日に調印された日魯通好(にちろつうこう。魯=露)条約に由来します。

「あれ?12月21日じゃないの?」思わるかも知れませんが、当時は旧暦(太陰暦)を用いており、現代の新暦(太陽暦)で2月7日に相当するため、親しみやすい2月7日となりました。

日魯通好条約の条文。クリル諸島(千島列島)は得撫島より北であると明記している。Wikipedia(写真:World Imaging氏)より。

この日魯通好条約によって、日本とロシアの国境が択捉島とその北にある得撫(うるっぷ)島の間に設けられ、北方領土が国際的に日本の領土であることが確定されたのです。

奪われた北方領土

しかし、昭和20年(1945年)に日本がアメリカはじめ連合国軍との戦争(大東亜戦争太平洋戦争)に敗れ、当時中立を保っていたソ連に和平交渉の仲介役を頼んだところ、

「日本は戦う意思を放棄した」

と判断。ならば日本が降伏してしまう前に北海道を攻め奪ってしまおうと8月9日、日本に対して宣戦布告します。

ソ連は帝政ロシア時代からずっと「不凍港(冬になっても凍らない港)」を欲しがっており、ヨーロッパ(地中海)への進出を断念してからというもの、東方への進出を試みて来たのでした(かの日露戦争も、それが遠因となっています)。

ソ連軍は当時日本領だった南樺太(サハリン)や千島列島などに攻め込み、日本がポツダム宣言を受諾し、完全に降伏した後も戦闘を続けました。

樺太を南北に分けていた日ソの国境線。Wikipediaより。

9月5日までに北方領土は全域ソ連に奪われてしまったものの、現地の日本軍は果敢に抵抗。侵略のスピードを遅らせたことでアメリカ軍が先に進駐、辛うじて北海道への上陸は阻止します。

その後、昭和26年(1951年)にサンフランシスコ講和条約を締結した際、日本政府は南樺太と千島列島(クリル諸島)を放棄しますが、先述のとおり北方領土は千島列島に含まれないため、いぜん日本の領土として返還を求めているのです。

※そもそも、放棄した南樺太や千島列島にしても、日本の主権下におかれなくなっただけであって、ソ連(ロシア)に譲るとは決まっていません。

終わりに

こういう話を紹介すると「しょせん世界は弱肉強食、強い者が弱い者から奪うのは当然だ」「文句があるなら、また戦争で奪い返せばいい」などと主張する自称リアリスト(現実主義者)がいますが、そのセリフは火事場泥棒や押込み強盗と何が違うのでしょうか。

現に、北方領土の日を制定するに当たって「ソ連が中立を破棄して攻め込んで来た日にすべきだ」「いや、北方領土を完全に奪われた日にすべきだ」などの意見もあったようで、いずれも「あの屈辱を忘れるな!」というメッセージが少なからず支持されていました。

しかし、それではソ連と同レベルであり、あくまでも平和的に返還を求め続ける意志を示すため、日本政府は国際的に北方領土の領有権が認められた2月7日に決定したのです。

北方領土に本籍を置くこともできる。Wikipediaより。

北方領土の返還にはまだ長い道のりですが、国際社会にあるべき道義を平和的に示せるか否か、日本外交の真価が問われています。

※参考:
上原卓『北海道を守った占守島の戦い』祥伝社、2013年8月
相原秀起『一九四五 占守島の真実 少年兵が見た最期の戦場』PHP研究所、2017年7月
2月7日は「北方領土の日」-内閣府
北方領土問題の歴史|北方領土問題対策協会

日本の文化と「今」をつなぐ - Japaaan

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