STU48瀧野由美子「5作連続センター」の意義を地域密着グループという背景から考える【アイドルセンター論】
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STU48
なぜ彼女たちは「センター」に立ったのか⁉
アイドルセンター論
STU48 瀧野由美子(後編)
48グループや坂道グループは結成からセンターを固定させる手法を多くとってきたが、STU48も例外にもれず1stシングルから5thシングルに至るまで瀧野由美子をセンターに抜擢している。後編では彼女の5作連続センター抜擢の意義について考えていきたい。
瀬戸内の7県を拠点とするSTU48は地域密着型を掲げ、瀬戸内の魅力を広めるPR的な側面が強いグループだ。楽曲も瀬戸内の魅力のひとつである海がテーマとなっており、MVも瀬戸内の綺麗な町並みが映し出されている。グループの目的のひとつとして、瀬戸内の魅力を全国に広めるという使命があるが、瀧野はこうしたグループの背景を何よりも大事に活動してきたメンバーだ。
2018年のインタビューで瀧野は「この1年はSTU48の代表としてメディアに出させていただくことが多かったし、何よりAKB48さんの選抜に入ったときに『自分をきっかけにSTU48のことを知ってほしいな』という思いが強くなりました」(『日経エンタテインメント!』2018年7月号)と語っていた。
結成したばかりで方向の見定まっていなかったSTU48にとって、センターである瀧野がこのように積極的に発信してきたことは、STU48が向かうべき道筋を示すことにも繋がった。
とりわけ西日本豪雨によって瀬戸内が災害を被った際には、「瀬戸内を拠点にしている自分たちだからこそできることがあると思いました。自分たちは応援する側でもあるけど、被害を受けた側でもあるから、皆さんの気持ちに寄り添うことができるじゃないかと思ったんです」(『B.L.T.』2019年2月号)と、瀧野は瀬戸内を拠点とするアイドルとしての使命を強く口にしていた。
瀧野の瀬戸内を何より大切に思う気持ちは、地域密着型のSTU48のセンターに相応しい精神と言えるだろう。こうした瀧野の思いを受けて、ファン投票企画「ファンが決めちゃうSTU48 6thシングルカップリングユニット」で4位に選ばれた瀧野は、瀬戸内の魅力を多くの人に広めべく結成されたユニット「瀬戸内PR部隊」としても活動している。
そんな瀧野に対して、元キャプテンの岡田奈々はセンターとしての振る舞いを高く評価しており、メンバーからの信頼も厚い。瀧野はライブでのMCやテレビ出演時をはじめとした様々な場所でSTU48の顔としてコメントを求められることが多いが、丁寧に言葉を選んで話していると感じられる場面が多く、センターとしてグループ俯瞰的に見ているという印象だ。
しかし一方で、メンバーの岩田陽菜からは「いい意味で、センターって感じじゃないんです(笑)。先頭で仕切るんじゃなくて、『一緒にSTU48を盛り上げていこうね』っていう感じ。真面目で、でも少しおっちょこちょいです(笑)」(『トレンドニュース』)と評されているように、メンバーからは天然キャラとして愛される一面も。
「センターは毎回自分じゃないと思っているけど、1期生やドラフト3期生全員選んでもらったことが嬉しくて、この立場もとてもありがたいことだなと思えるようになりました。もちろん毎回プレッシャーを感じていますが、ありがたみを感じながら楽しく臨めています。活動につれてメンバー同士の距離も縮まって、支え合う空気感が出来たことも大きいです」(『MusicVoice』)と初めて全員選抜となった3rdシングルで、誰よりも喜んでいたのがセンターの瀧野だった。
岩田も話していたが、「STU48を一緒に盛り上げていく」、これこそ彼女が築きあげてきたセンター像なのだろう。何より個人よりもグループとしてどうあるべきかを考えられる彼女はセンターとして求められる要素のひとつだ。
こうしてセンターとしてSTU48の基調を作り上げていった瀧野であるが、6thシングルからは石田千穂へとセンターが交代するという、STU48的に言えば大きく舵を切ることとなった。
乃木坂46を例に挙げるならば、生駒里奈が6thシングルで白石麻衣へと交代し、新たなファン層を開拓したように、センターの交代はグループにとって大きな起爆剤となり得るものだ。しかし、それはグループの基調を築いてきた瀧野のこれまでの辛労があってこそ。
6thシングルで瀧野は石田の脇を固め、センターを支えるポジションとなっている。センター経験者である瀧野が初センターの石田をフォローするという理想的なフォーメーション。グループのことを第一に考える彼女の姿勢は、どのポジションでもきっと力になるはずだ。これからも“STU48の顔”として、爽やかな瀬戸内の風を全国に吹かせていってほしい。
(文=川崎龍也)