約4万年前に発生した地球の劇的な磁極反転の証拠が発見される(国際研究)

credit:NASA's Goddard Space Flight Center
今から約4万年前、地球の磁場(地磁気)が一時的に南北逆になる磁極反転(地磁気逆転)が発生した。地球環境が激変し、気候が大きく変わり、生物も大量に絶滅し、我々の祖先にとっても大きな影響をもたらしたとされている。
『Science』(2月19日)で発表された最新研究では、激動の時代を生きた木の年輪から当時の磁極反転の証拠を発見したそうで、これまで謎に包まれていた磁極反転に関する詳細が明らかになると期待されている。
・木の年輪に刻まれた太古の記録
その証拠は、ニュージーランドで発掘された4万年以上前のカウリの木から見つかった。樹木の年輪には、それが成長していた当時の大気の様子が刻み込まれている。
特に貴重な情報源となるのが、炭素の放射性同位体「炭素14」だ。宇宙から降り注いだ宇宙線は、大気の中で窒素原子と核反応を起こす。このときわずかに生成されるのが炭素14だ。
宇宙線は常に降り注いでいるので、多少の増減がありながらも炭素14は比較的安定して生成されている。だがもし年輪に含まれる炭素14が急激に増加していれば、その年は何らかの理由によってたくさん生成されたということになる。

ニュージーランドのカウリの木/iStock
・地磁気が最も弱かったのは4万2200年前
地球最後に起きたとされる磁極反転(地磁気逆転)したのは、およそ4万1000年前のことだ。この現象は800年ほど続いたと考えられており、「ラシャンプ・イベント」と呼ばれている。
地磁気が反転するとき、地球の磁場が弱体化する。すると、それだけ大気に進入する宇宙線の量が増える。それは同時に、生成される炭素14の量をも増加させる。ラシャンプ・イベントの800年間、地磁気が28%弱まったと確実に言えるのは、それを示唆するデータがあるためだ。
しかし今回のカウリの木の分析から明らかになったことは、地磁気がもっとも弱かったのはラシャンプ・イベントが起きる前だったということだ。
4万2200年前から始まったその時期のことを、研究グループは「アダムズ過渡期地磁気イベント(アダムズ・イベント)」と呼んでいる(イギリスのSF作家、ダグラス・アダムズに因む)。
この逆ピークの時期、地磁気は通常の0~6%にまで低下していたという。つまりアダムズ・イベントでは、実質的に地球は丸裸だったということになる。
Paleopocalypse! - Narrated by Stephen Fry.
・太陽でも磁場反転が起きており、地球環境は激変
それだけではない。この時期、太陽でもまた定期的な磁場反転が起きており、その強さは数分の1にまで低下していた。
地球にとって、太陽の磁場も宇宙線を防ぐバリアとして機能する。アダムズ・イベントでは、母なるこの惑星は、地磁気の加護はおろか、太陽の加護も得られない、完全に無防備な状態にあったことになる。
これが大気のオゾンを激変させた。大気中の電子が分離し、光が放出され(イオン化)、オゾン層を焼いてしまうからだ。
こうして世界中の気候が激変する。雷雨が荒れ狂い、世界各地で壮大なオーロラが出現、気候も大きく変動した。この時期に気候や環境が大きく変化しただろうことは、年輪以外のさまざまな記録からもうかがえるという。

Pixabay
・気候の激変の影響で人類はアートに目覚める?
ところで興味深いことに、世界最古の洞窟画が描かれたのはちょうどその頃のことだ。研究グループは、アダムズ・イベントによって、祖先の生活がアウトドアからインドアに変わったことと関係があるのではないかと推測している。
なんだかコロナ禍で引きこもり生活を余儀なくされた現代人を思わせる。我々の祖先はライフスタイルが変わって洞窟にアートを残したかもしれないが、外出自粛を強いられた私たちは何か素晴らしいものを残せただろうか?
References:Science / newsroom/ written by hiroching / edited by parumo