会いたくて…主を慕い都から海をひとっ飛び。樹齢千年「飛び梅伝説」の梅が咲く春が来た 【前編】

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会いたくて…主を慕い都から海をひとっ飛び。樹齢千年「飛び梅伝説」の梅が咲く春が来た 【前編】

「飛び梅伝説」という話をご存じでしょうか。春が訪れると、可憐な花を咲かせ上品な甘い香りを漂わせる梅。

梅は、弥生時代に中国から渡来したという説、または遣唐使が持ち込んだという説がある、昔から馴染み深い植物です。

「天神さま」で知られる、学問の神さま菅原道真公は、逝去するまで梅をこよなく愛した人物として有名。

梅のほうもそんな主を深く慕い、道真公が左遷された際そばにいたい一心で、京のお屋敷から九州の太宰府まで海を渡り飛んで行きました。

それが、千百四年の時を経て、今に伝わる「飛び梅伝説」です。

令和の時代になっても、未だに太宰府天満宮には春になると美しい花を咲かせる、樹齢千年といわれている「飛び梅」は健在

今回はその伝説をご紹介しましょう。

梅の紋の天神さま

 太宰府天満宮の梅(写真:photo-ac)

学問の神さまで知られる「菅原道真」。道真公を祀る神社・天神さまでは、神紋(家紋のようにそれぞれの神社に用いられている紋)である「梅の紋」がよく描かれています。

神紋の『星梅鉢紋』(写真:wikipedia)

道真公が、生前こよなく梅を愛でていたという伝承に基づいて天神(天満宮)に用いられるようになったそうです。

幼い頃から梅をこよなく愛した道真

 幼少期の菅原道真を描いた作品(月岡芳年「月百姿」)

平安時代の貴族で、学者・漢詩者・政治家であった道真公。

幼い頃から漢詩や和歌の才能を発揮し、わずか5歳のときに庭に咲く紅梅を見てこのような和歌を詠みました。

『美しや 紅の色なる梅の花 あこが顔にも つけたくぞある』

「あこ(阿呼)」とは、道真公の幼名です。

紅色の梅の花が美しいなあ。自分の顔に付けて飾りたくなるな

……というような意味合いでしょうか。

梅の花に感動する幼い道真公の想いが伝わってくるような可愛らしい和歌でもあります。

そして、11歳の頃にはこのような漢詩を詠みました。

月耀如晴雪
梅花似照星
可憐金鏡転
庭上玉房馨

空に輝く月は、晴れた日の雪のよう。
花咲く梅は照らされる星に似ている。
愛おしいことだ、金の鏡のような月光が転じて、
庭の玉のような花房を
香らせている。

道真公の類稀なる才能と、いかに庭に咲く梅を愛しているかが伝わってくる詩です。

左遷された道真を追いかけ海を飛んだ梅

 五條天神社の紅梅(写真:T.TERUAKI)

さまざまな才能に優れ、当時の宇多天皇のお気に入りとなり出世し大活躍をした道真公は、藤原氏の奸計により、京の都から九州の太宰府に左遷されてしまいます。

そんな道真公を幼少期からずっと成長を見守り、愛し愛されてきた庭の梅の木は「主の側にいたい」……という一心で、はるばる海を越えて太宰府まで飛んで行くのです。

「梅の木が飛ぶ?そんなばかな」と思われるでしょうが、その梅は今や福岡県太宰府市にある、太宰府天満宮のご神木として大切に扱われています。

【後編】では、菅原道真公の代表作「東風ふかば 匂ひをこせよ 梅の花……」の詩にまつわる出来事と、「飛び梅」の話をご紹介しましょう。

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