柏木由紀「表題曲単独センター」の実現は、今後のAKB48にどんな意味をもたらすか?【アイドルセンター論】
なぜ彼女たちは「センター」に立ったのか⁉
アイドルセンター論
AKB48 柏木由紀(後編)
グループの草創期から15年もの間、常に最前線に立ちアイドル活動をまっとうしてきた柏木。周知の通り総選挙において常に上位にランクインしていた彼女だが、表題曲でセンターを務めたのは実は1度きりしかない。アイドルとしての人気も実績も兼ね備えた柏木だが、表題曲センターというくくりでみたときに意外にも少ないことに驚かされる。
柏木がセンター務めたのは2015年3月に卒業ソングとしてリリースされた『Green Flash』で、それも単独センターではなく小嶋陽菜とのWセンターだった。前年の選抜総選挙では渡辺麻友、指原莉乃に続く3位を獲得しており、人気、実力から見てもセンター抜擢は必然の成り行きだろう。指原がその後幾多もセンターに抜擢されたように、柏木がセンターとしてグループ牽引するということも可能性としては十分にあったはずだ。
しかし、2012年の絶対的センター前田敦子と、2014年の大島優子の卒業を受け、AKB48は次世代センターを見出すという思惑があったのだろう、その後渡辺や宮脇咲良、島崎遥香らをセンターに起用するようになった(そもそも柏木はこの時期ソロアイドルとして充実期を迎えており、グループとソロとの兼ね合いもあったとも考えられる)。
とはいえ、昨年8月には『FNS歌謡祭』(フジテレビ系)で初の単独センターとして「フライングゲット」を披露するなど、過去にもセンターポジションに立って歌唱するという場面は多くあり、柏木のグループ内における影響力は大きい。柏木がセンターに立つ意味は、間違いなくAKB48の顔としてであり、老若男女が視聴するテレビ番組においてグループ随一の知名度を誇る彼女が抜擢されるのも理解できるだろう。
そんな柏木が最前線で活躍できている理由として、ファンとの関係性を大切にしてきたことが挙げられる。柏木は元祖握手会女王と称され、握手会における神対応は多くのファンの心を鷲掴みにした。
いまや握手会はファンとの直接的なコミュニケーションが取れる貴重な機会となっているが、彼女はその重要性を早くから理解していた。アイドルファンだった彼女だからこそ、自分のファンが何を求めているのかが分かるのだろう。
最近のインタビューでも「いろいろなアイドルがいる中で、柏木由紀を応援していて良かったと思ってもらえる。そんなアイドルとファンのシンプルな関係性を、30代でもずっと続けていく。そこはブレないようにしたいです」(Yahoo!ニュース/30代もアイドルを続ける柏木由紀(AKB48)「年齢を重ねて自分をさらけ出して理想に近づいてます」)と、ファンを大切にするという自身のアイドル像を語っていた。この発言に彼女のアイドルとしてのあり方が詰まっているような気がしている。ファンを大切にしてきたからこそ、彼女は今もなお高い人気を獲得し続けているのだ。
これまで柏木はセンターに立ちたいとはっきりと口にすることはあまりなかったが、卒業までに叶えたいことのひとつに単独センターがあるそうで、「自分が叶えたいというのもあるけど、長年応援してくれてきたファンに報いる形ってそれくらいしか思いつかないというか。これで私が単独センターなしで卒業を迎えたら、本当にファンは崩れ落ちると思うんですよ(苦笑)」と語っている(『ORICON NEWS』/柏木由紀「センター諦めません」 変化するファンへの“神対応”ならぬ“友対応”の真意)。
柏木がセンターに立つことで、いわれのない言葉を投げかけられることもあるだろう。それでもAKB48の長い歴史をその目で見てきた彼女がこの先センターに立つことには大きな意味があるはずだ。そして柏木がセンターに立つタイミングは、グループにとって重要な局面となることは間違いない。それが柏木の卒業ではないことを願うばかりであるが、彼女がセンターに立つその日を楽しみにしたい。
(文=川崎龍也)