乃木坂46個人PVの「アイドルの虚実混交」を秋元真夏「タイムトラベラー」に見ると?【乃木坂46「個人PVという実験場」第17回1/5】 (3/3ページ)
これまで取り上げてきた個人PVの中にもしばしば、虚実皮膜に自覚的な作品は登場している。
ここからはあらためて、それら「アイドル」であることを軸にした虚実の混交が描かれる作品をいくつか捉えつつ、そこから浮かび上がるものをみていきたい。
■秋元真夏「タイムトラベラー」の構造
先の『超能力研究部の3人』のメインキャストの一人・秋元真夏が主演した2018年の個人PV「タイムトラベラー」(シングル『帰り道は遠回りしたくなる』収録)はまさに、『超能力研究部~』と同じく、秋元が明確なフィクションと「乃木坂46の秋元真夏」自身との双方を演じてみせる構造を持っている。
https://www.youtube.com/watch?v=b17o2O1ITi4
(※秋元真夏個人PV「タイムトラベラー」予告編)
この個人PVを監督するのは山田篤宏。山田の作品群については本連載で昨年7月に扱っている(https://taishu.jp/articles/-/80897)が、トリッキーな構造を駆使しながら、見る者を煙に巻くような独特のスタイルを持つ作家であった。そして本作「タイムトラベラー」は、「映像作家が乃木坂46の個人PVの監督を依頼される」ところから物語を始める、明快にメタ的な設定を用いたドラマ作品になっている。
このドラマでは、個人PVを依頼されたものの作品のアイデアが思いつかない映像作家(小平伸一郎)が、姪の夏子(秋元)からの助言をヒントにスランプを打開していくさまが描かれる。彼が依頼されているのは、他ならぬ「秋元真夏の個人PV」の監督である。
やがて映像の位相が変わり、この映像作家が監督した(という設定の)「秋元真夏の個人PV」が始まる。ごくストレートに「アイドル・秋元真夏」の魅力を引き出そうと企図された(という設定の)この「秋元真夏の個人PV」では、丁寧にも彼女が「変に演技をしていない」ことがわざわざ謳われ、多くの人々がイメージするであろうアイドル的な振る舞いをする秋元が映し出される。
もちろん、秋元がここで「演技をしていない」わけでは当然ない。しかし、「乃木坂46の秋元真夏」がナチュラルに表現されるこの映像中で、彼女が演じる「秋元真夏」とはどのような水準にいる人物なのか、その答えはシンプルではない。入り組んだ構造の妙を感じさせる山田篤宏らしいこの個人PVは、アイドルの虚と実の狭間を遊んでみせるような、独特のタッチの作品になった。