衛藤美彩「アナタハ私ノ夢」と遠藤さくら「わたしには、なにもない。」同じ構造の別の味わい【乃木坂46「個人PVという実験場」第17回3/5】 (3/3ページ)

日刊大衆

17枚目シングル『インフルエンサー』に収められた衛藤美彩の個人PV「アナタハ私ノ夢」(監督:平井健太)は、芸能の仕事が決まり東京に旅立つ主人公(衛藤)が、友人(北川原志於)に記念写真を撮ってもらう日の一コマを描いたドラマ型作品である。

https://www.youtube.com/watch?v=Q9vsgZsyFg4
(※衛藤美彩個人PV「アナタハ私ノ夢」予告編)

 芸能の世界に入る直前の自分自身の姿を留めておくため、衛藤演じる主人公は友人に自らのポートレート撮影を依頼する。もちろんそれは、直接的には写真に残すことによって、東京行き直前の自身の姿を視覚的に記録することを意味する。けれどもまた、旧友とプライベートな立場で撮る/撮られる時間を作ることで、二人の尊い関係を心のうちに記憶するために、このささやかな時間はある。

 ことにその関係性が雄弁に描かれるのは、友人が写真の現像のための暗室に衛藤を招き入れる、静かな一場面である。暗闇の中で、二人の短い会話といくつかの物音だけが響くこのワンシーンは、見かけ上の情報量こそ限られているものの、違う世界に生きることになる二人の思いや、交わされるコミュニケーションのありようなど、暗示されるものはきわめて豊かである。それだけに、今日の記憶がすぐさま遠い過去になるであろうことを予期している友人の言葉も切なく響く。

 先の伊藤や遠藤の個人PVと趣が異なるのは、ドラマのメインパートから歳月が流れ、衛藤が芸能の仕事に従事している日々を現在時制にして幕を閉じる点である。夜の東京をロケ車で移動する彼女の日常は、すでにあのポートレート撮影の日から遠く隔たっている。けれども、仕事の合間の微睡みにふと去来するのは、あの日の暗室のひとときである。そしてこのとき、「アナタハ私ノ夢」というタイトルが、友人から衛藤に託された一方通行のものではなく、双方向のベクトルをもつメッセージであることにも気づかされるのだ。

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