つなぐのは貴族も好む「最高位の色」ふりかけと『源氏物語』の高貴で優美な関係

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つなぐのは貴族も好む「最高位の色」ふりかけと『源氏物語』の高貴で優美な関係

貴族も好む「最高位」の色

日本では、紫色は昔から「高貴」「優美」な色とされています。

これはなぜかというと、その染色方法に起源がありました。

紫色は、紫草の根から染色します。この染色方法が、根を乾燥させ、杵(きね)でついて麻袋で絞り、60度以下の液で染めて……と大変な手間がかかるのです。よって古代日本では、紫色の服は一部の高貴な地位の人しか着用することができなかったのです。

貝を使って染める方法もありますが、これは日本では流行りませんでした。一方でヨーロッパではこの方法が採用されており、これもまた稀少な色として扱われています。

そんなこともあって、紫色は603(推古11)年の冠位十二階の制では最高位の色とされました。また、その後757(天平宝字元)年に定められた養老律令(ようろうりつりょう)でも、紫は最上位とされています。

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もともと、紫色を最高の色としたのは当時の中国(隋・唐)にならったからです。

当地では「紫」は帝室に関する象徴語でもありました。例えば、天子の御殿を「紫辰」「紫極」大后の居室を「紫房」などと呼んでいます。

そして、優美な貴族文化が栄えた平安時代には、紫色はますます愛されるようになります。

『源氏物語』は作者の名前も「紫式部」ですし、作品内の最重要ヒロインと言っても過言ではない紫の上は、容姿端麗、眉目秀麗、才色兼備の理想的な女性として描かれています(もっとも可哀想なほどの苦悩人ですが……)。

wikipediaより「スズメが飛んでゆくほうを眺める紫の上、尼君、侍女らがいる僧都の家を外から垣間見る光源氏(「若紫」)」

そういえば清少納言による『枕草子』の第一段、超有名な「春はあけぼの」にも、いの一番に紫色が登場しますね。

春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山際、少し明かりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる。

また、「めでたきもの」の中にはこんな一節があります。

すべてなにもなにもむらさきなるものはめでたくこそあれ。花も糸も紙も。庭に雪のあつくふりしきたる。一の人、むらさきの花の中には、杜若(かきつばた)ぞすこしにくき。六位の宿直(とのゐ)姿のをかしきも、むらさきのゆゑなり。

清少納言はよっぽど紫好きだったんでしょうね。

wikipediaより枕草子絵巻 部分 鎌倉時代

その後、時代が変わっても、紫色は特別な色として用いられています。

鎌倉時代は武士の時代で、貴族的な高貴さや優美さとは一見して無関係のようですが、それでも紫色を鎧の色に採用する武将が出てきたりしています。また江戸時代になると、当時のファッションリーダー的な存在だった歌舞伎役者によって「江戸紫」が流行っています。

文学から食文化まで…。“紫”の持つイメージの豊潤さ

ところでそんな紫色は、日本人にとってはただの「高貴」「優美」という外面的なものにとどまりません。それはもっと情緒的・文学的な方面においても、豊かなイメージを生み出しています。

たとえば、紫を高貴な色として憧れる感覚――手の届かないものに想いを寄せる感覚――は、日本では「なつかしさ」の観念にも結び付いていきました。

また、古今和歌集には、こんな歌があります。

紫のひともとゆへに むさし野の草はみながらあはれとぞみる

これは、一本の紫草に対する愛おしさゆえに、武蔵野に生えている全ての草が愛おしい……という慕情を歌ったもの。もちろん紫草はひとつの比喩で、これは一人の人を愛するがゆえに、その人に縁(ゆかり)のある全ての人が愛おしく思えてくるという意味です。

この歌は「詠み人知らず」とされていますが、ここから、紫色=縁(ゆかり)というイメージが生まれたとされています。

有名な、三島食品のふりかけ「ゆかり」も、この歌が元ネタだそうです。

もともと、先述した紫草の根には、和紙に包んでおくと色が移るという性質があります。そのへんからも、紫色は、「想い人を自分の色に染めたい」という慕情とも結びつくようになりました。あるいはこうしたイメージが先にあったからこそ、先の歌も詠まれたのかも知れません。

高貴さ、憧れ、恋愛感情、懐かしさ、慕情……。紫色は、平安時代の『源氏物語』と、ふりかけまでをも橋渡しするほどの豊潤なイメージを含んだ色だったのです。

参考資料

長崎盛輝『色・彩飾の日本史 日本人はいかに色に生きてきたか』(平成2年、淡交社) Japanese style web design いろはクロス「紫色の歴史・染料・価値観について–日本の伝統色を探る–」 名前の由来 – ゆかり®三島食品

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