ナイツ・塙宣之インタビュー「テレビで漫才をしたくなくなるし、“舞台を見に来てください”としか、言えなくなる」
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ナイツのちゃきちゃき大放送
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警視庁・捜査一課長
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塙宣之
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ナイツ

最近、テレビで漫才をやるときに、「事前に台本を見せてほしい」と言われることが多くなりました。生放送でもないのに、です。それで、スポンサーやコンプライアンスの関係で「このボケはやめてくれ」って言われる。もうこうなると僕ら、何もできないんですよ。
収録なんだから、まずウワーッと漫才をやらせてもらって、もし問題があるなら、編集でカットしてくれれば、それが一番いい。でも、そんなこともしてくれないわけです。結果として、無難なことばかりが放送されて“あんまり面白くない”って思われちゃう。これは本当に損です。
でも、フリートークで誰かの不倫や不祥事をイジるのは大丈夫なんですよね。漫才のネタにして面白く作り上げるのはダメで、フリートークでストレートに批判するのはいいって、逆だと思うんですよ。
漫才師として何かを表現することが、どんどん厳しくなっていると感じています。だから、テレビで漫才をしたくなくなるし、「舞台を見に来てください」としか、言えなくなってくる。
ラジオも切り取られるっていう部分は同じだけど、やはりテレビとは違います。テレビとラジオは、スポーツで言えばルールが違う。ラジオが2人でやるバドミントンなら、テレビはサッカーみたいなもの。テレビだと吉本芸人のチームプレイに、東京の芸人は入っていけないんですよ。一方、ラジオは僕らだけの空間ですから、好きなことがやれます。
今、ナイツは月〜木で『ザ・ラジオショー』、木曜に『高田文夫のラジオビバリー昼ズ』(ともにニッポン放送)、土曜に『ナイツのちゃきちゃき大放送』(TBSラジオ)、とレギュラー番組をやっていますが、たぶん、僕は“ちっちゃいお山の大将”なんですよ。
本当は他の大きな山に行って、うまく立ち回れればいいんでしょうけど、プライドの高さが災いしてそれができない(笑)。だから、ちっちゃな山を見つけてやっている。
きっと、誰にも邪魔されたくないんでしょうね。漫才やラジオはナイツ2人だけの空間で、誰にも邪魔されずにできる。だから、なんとかやれているんだと思います。
■次の目標は、やっぱり大河ドラマ
最近は漫才の他に、役者業もやっています。レギュラー出演している『警視庁・捜査一課長』(テレビ朝日系)の新シーズンがこの4月から始まりますが、最初にお話をいただいたときは、迷いました。「演技なんて無理じゃないか」って思ったんです。テレビドラマもあまり見てなかったし、とにかく自信がなかった。
でもその当時、いただいた仕事は断らず、なんでも挑戦してみようと考えていた時期だったので、思い切って出演を決めました。出演してもう3年になりますが、とにかく迷惑をかけないように、間違えないようにやっています。
先日は、フジテレビ系の月9ドラマ『朝顔』にも出演させてもらいましたし、その前にはNHKの朝ドラにも2本出演させてもらいました。朝ドラ、月9……と来たら、次の目標は、やっぱり大河ドラマ。『青天を衝け』、出たいですね(笑)。
でも、僕の背骨は、やっぱり「漫才」です。役者もユーチューブも、最近では毎週月曜に生配信で『上石神井ラジオ』もやっていますが、すべては漫才のネタのため。
漫才師だけを続けていけるのならば、素晴らしいことです。でも、結果的に現在、漫才協会の看板たる漫才師は数組しかいません。漫才だけをやっていたら、どんどん細くなっていく。ネタが作れなくなって、お客さんに飽きられ、辞めていく人もいます。
おぼん・こぼん師匠も、青空球児・好児師匠も、お芝居やラジオやテレビもやってきて、それを漫才の栄養にしてきた。僕も、漫才をずっと続けていきたいからこそ、いろいろなことに挑戦しているんです。
塙宣之(はなわ・のぶゆき)
1978年、千葉県生まれ。2000年4月、土屋伸之と漫才コンビ「ナイツ」を結成。内海桂子の弟子として活動し、2003年に漫才新人大賞を受賞。2008年からは3年連続で『M-1グランプリ』の決勝に進出する。2015年、漫才協会副会長就任。現在、ラジオレギュラー番組『ザ・ラジオショー』『高田文夫のラジオビバリー昼ズ』(ともにニッポン放送)や『ナイツのちゃきちゃき大放送』(TBSラジオ)をはじめ、テレビやラジオ、ユーチューブ、雑誌連載など幅広いジャンルで活躍中。