あの犬型ロボット「スポット」がフランスで軍事訓練を開始

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あの犬型ロボット「スポット」がフランスで軍事訓練を開始
あの犬型ロボット「スポット」がフランスで軍事訓練を開始

image credit:twitter

 ロボットが戦場で活躍する未来を描いた映画やアニメは無数にあるが、それがフィクションでなくなる日は案外近いのかもしれない。

 今月2日、フランス軍が実施した軍事演習にボストンダイナミクスのスポットが使用されたというニュースが話題となっている。

 現地メディアによると、この演習は未来の戦場でのロボットの有用性の評価を意図したもので、参加したスポットは士官学生のテスト用ロボの一つだという。

 これまで自社製品の武装を否定し、スポットの武器化も禁じているボストンダイナミクスは軍事に関与するスポットをどう判断するのか。その見解も気になるところだ。
・フランス軍の演習にスポットが!課された任務は偵察?

 今月2日、フランス軍が実施した軍事演習にボストンダイナミクス社の犬型ロボットスポットが兵士と共に登場した。


 演習でスポットに課された任務は偵察とみられるが、海外メディアは将来的な用途について懸念を示している。

 この光景はフランスの代表的な士官学校のサン・シール陸軍士官学校がツイッターでシェアしたもの。この演習は「将来の課題に対する学生の意識を高める」ためのもので「戦場のロボット化」はその一部だという。


・軍学校のテスト用の機体。ボストンダイナミクスも使用を認識

 フランスの新聞社Ouest-Franceによると、本演習でのスポットの登用は将来の戦場におけるロボットの有用性の評価のためで、使用機体はサンシール陸軍士官学校と拠点を同じくする諸兵科連合軍学校の学生がテストに使う多数のロボットのうちの一つだった。

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image credit:lignesdedefense

 この件についてボストンダイナミクスの事業開発担当バイスプレジデントであるマイケル・ペリーは、そのロボットはヨーロッパの販売業者シャークロボティクスが供給したもので、アメリカの企業はこのような特定の使用に関する通知を受けていない、と述べている。

それについては我々も皆さんと同様に学んでいます。この取り組みの正確な範囲は明確ではありません

 さらに同社は、フランス政府が軍事を含む形で自社製のロボットを使用している件は認識していると述べた。


・ロボットに救われた兵士。スポットの充電切れアクシデントも

 Ouest-Franceは、2日にわたる演習中に兵士が交差点を占領する形の攻撃作戦のほか、昼と夜の防御作戦、市街戦のテストなど多くのシナリオが実行されたと報じている。

 各シナリオではまず人のみを使用し、次に人とロボットを一緒に使用することでロボットの影響を確認した。

 メディア情報によるとその結果、ロボットは作戦を遅延させたものの軍隊の安全確保に役立ったとのことで、ある兵士がこう述べていたという。

ロボット無しの市街戦の途中で私は死にました。でも最初にロボットに偵察させるシナリオでは死にませんでした


 また兵士たちは、問題の1つに充電が必要なスポットの充電池寿命を付け加え、演習中に動けなくなったスポットを運び出すはめになったと語った。

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 電池が尽きればただのお荷物になり、充電時間を要する点がネックとなったスポットが実際どのような役を担っていたかは不明だが、Ouest-Franceは偵察に使用されたと推測している。

 およそ30kgのスポットは搭載カメラで遠隔操作が可能。また4本の足で他のロボットには困難な地形もナビゲートできる。その特長はこれまでも建設現場や鉱山など、多様な環境での遠隔調査に役立ってきた。


・他のハイテクマシンも試験に登用。スポットは軍用ロボに?

 演習ではスポットのみならず他のマシンの試験も行われた。


 エストニアの自動運搬車メーカー、ミルレムロボティクス社製の遠隔制御車両「OPTIO-X20」や、フランスの国営軍事会社Nexter製の装備運搬用ロボット「ULTRO」など陸上に特化したマシンが軍事経験をもつ学生たちが計画したシナリオに沿ってその機能を披露した。

ULTROと機関砲を備えた装軌車両OPTIO-X20
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ULTROは荷物を運ぶラバにちなみロボットラバの愛称をもつ
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 実戦ではないものの、スポットがこのような場に持ち込まれた現実をめぐり、あの犬型ロボットがいずれ戦場のどこかに配備されるのではないか?との声が広がるのは当然のことだ。

 ボストンダイナミクスは米軍向けロボットの開発に長らく携わってきた。しかし商業市場への移行に伴い、軍事関係から距離を置くようになったという。

 スポットはアメリカの警察の運用試験を受けてるが、ボストンダイナミクスは常に自社の製品が武装することは断じてないと強調してきた。その点についてペリーも以下のように述べている。

我々は顧客がロボットで人に危害を加えることなど決して望んでません


・検討中のボストンダイナミクス。人に危害を加えるか否かが焦点

 スポットの利用規約は「危害を加えるため、または人や動物を威嚇する目的で武器または武器のように使用すること」を禁じている。

 だがこんな規約では軍も兵士の偵察を手伝うロボットはその規約に反してない、と主張できそうだ。むしろ軍事的関与の言い訳とみなす人もいるかもしれない。

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image credit:lignesdedefense

 ペリーは海外メディアThe Vergeのインタビューに対し、ボストンダイナミクスはサプライヤーや顧客によるロボットの兵器化を禁ずる明確な方針を掲げていたが、軍の顧客による兵器ではない形での運用禁止については「現在検討中」と答えている。

軍隊がロボット工学を使って人を危害から遠ざける限り、その方法はテクノロジーの有効活用として非の打ち所がないものと考えます。現在議論に上がっている前方展開モデルについては、人に危害を加えるために積極的に使用してるか否かの判断が必要なため、そこをよく理解しなければなりません

 
 研究者を含むさまざまな人々からの反対や懸念をよそに、世界中の軍隊が戦場にロボットを押し出している。

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 近年最も重要な展開は遠隔操作ができるドローンの投入だが、今は偵察用やパトロール用ロボットの試験も進んでいる。

 The Vergeによると、現在米軍は固定監視カメラの代替品として、ボストンダイナミクスのライバル企業のゴーストロボティクスが開発した四足歩行ロボットの試験を行っているという。 ロボットが移動式の監視カメラとして十分に使えるとなれば戦場に導入される日も近そうだ。
 
 てことでこのままだとロボット同士が戦う未来も絵空事ではないのかも。昔ときめいたSFの世界が現実味を帯びるなんてあの頃は考えもしなかったけどな。

References:theverge / lignesdedefenseなど /written by D/ edited by parumo
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