ギスギスした今だから際立つ人情ドラマ『小節は6月から始まる』誕生秘話(2) (2/3ページ)
悪役はいないとはいえ、山も谷もある小説なので、楽しんでいただきたいですね。
――また「亡くなってしまった大切な人(家族や友人など)がどこかで見てくれている感覚」について書かれた小説でもあります。青山さんご自身、こうした感覚を覚えたことはありますか?
青山:亡くなった人が夢枕に出てきたという体験はないのですが、今まで生きてきた60年間を振り返ると、かなり大きなけがもしましたし、失敗や挫折もしてきました。その時は分からなかったのですが、今思い返すと、自分の力ではない別の力で助けられていたような気はしています。それが「亡くなっている人が助けてくれた」かどうかはわかりません。ただ、自分のものではない、何か大きな力がはたらいたとしか思えないような経験は何度かしています。
――この作品以外にもさまざまな小説を書かれてきたとお聞きしました。これまでに書いてきた小説についてお聞きできればと思います。
青山:初めて執筆したのは13年前でした。なぜ日本にはCIAやMI6のような諜報機関がないのか気になって、現実的な設立が困難なら、自分の中で組織を立ち上げて、その組織が危機を救う物語を書こうと考えたのが始まりです。
ただ、いきなりハードボイルドに仕上げるのはハードルが高かったので、「普段隣にいる人でも等身大のヒーローになれる」という身近さを前面に出し、笑いの要素も入れ、タフな部分はタフに、と表現の手段を決めました。
中途半端だけどそれでいい。どうせならこれをハーフボイルドと命名して新しいジャンルを開こう、と大それた構想を掲げてみたのです。今のところ構想した3部作の1部と2部は完成していて、3部が途中で止まっている状態です。
今回の小説でも、「JIO」という諜報組織から2人登場していますが、私の作品には必ずJIOの誰かがちょい役で出てきて、登場人物たちの過去や人物像が少しだけわかるようにしています。
――青山さんが小説を書くうえで影響を受けた作家や本がありましたら教えていただきたいです。
青山:小林信彦の全てです。