動物界では近親交配がタブーではない。あえて避けずに行われているその理由とは? (2/3ページ)
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・動物界における近親交配のリスクとベネフィット
生物学者や動物学者たちは、ある動物の行動を説明するために、数理モデルを駆使してさまざまな状況におけるコスト(費用)とベネフィット(利益)を分析してきた。
近親交配の文脈でいうなら、たとえば珍しい遺伝病を子供に伝えてしまうリスクがコストで、より効率的に遺伝子を残せることがベネフィット(利益)だ。
そうした分析からは生息環境や個体数といった要因を考慮したとしても、許容範囲内の近親交配は動物にとってもっとも成功する戦略であるという結論が得られている。
この仮説は、実験によってもさまざまな種で検証されている。そうした実験では、動物に血縁者と非血縁者とでどちらと交尾するか選ばせ、その選択に何らかの傾向や偏りがあるかを観察する。
ただし、動物界全体を見たときに近親交配が忌避されるような傾向があるかどうかといった視点がこれまではなかった。今回デ・ブール氏らが明らかにしようとしたのはその点だ。
そして過去40年で行われた139本の研究をレビューしたところ、一般に動物が血縁者と非血縁者を区別しているという証拠は得られなかったとのことだ。
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・多くの種で近親交配が普通に行われていることを確認
レビューされた研究であらゆる動物種が扱われているわけではないが、それでもヘビ・クモ・魚・鳥、さらには齧歯類をはじめとする哺乳類など88種の動物が観察されている。