「小説ならでは」の仕掛けが鍵を握る――道尾秀介が語る新作『雷神』と小説のポテンシャル(1) (3/4ページ)

新刊JP

――確かにページ1枚に対して向き合う時間を読者自身で決めることができるのが小説です。

道尾 :まさに小説のメリットだと思います。僕自身、デビューして17年になるのですが、小説の持つポテンシャルを甘く見ていました。小説ってこんなにポテンシャルがあるんだと、いまさら驚いています。

■小説を通して見えてくる「神」という存在

――『雷神』は一度読み終わってからが本番の小説のようにも感じました。最後まで物語を見届けたあとに、またページを開いて伏線を確認していくことを余儀なくされるんです。

道尾 :今時の言葉で言うと、コスパが良いとも言えますよね。何回でも楽しめるし、読むたびに物語の意味が変わってくる。僕も出版までに何十回も読んでいますが、いまだに面白いですし。

――とても緻密な構成ですから、登場人物の設定をかなりはっきりさせてから書かれたのではないですか?

道尾 :基本的には設定を固めてから書いていきました。ただ、そうでない部分もあります。

主人公たちは身分を偽って、舞台の一つとなる羽田上村という村に潜入取材に行くのですが、そこで出会う人たちについては事前に決めず、主人公たちと一緒で行ってのお楽しみにしていたんです。そうすることで、主人公たちと同じ気持ちになれるので。

――過去の事件の真相を知るべく潜入取材をするために、故郷の羽田上村に向かうシーンは、小説の中でも緊張が和らぐような雰囲気がありました。夕見が父親や伯母の偽名を考えて、さらに名刺まで作ってしまったりして。若さゆえの明るさと強引さがあるというか。

道尾 :主人公がつらい過去を抱えているうえに、周りの人間たちもみんな暗い顔をしていると、ページをめくる手が重くなってきますよね。それに、家族の中にだいたい一人は明るい性格のやつっているじゃないですか。

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