今も海底に沈むタイタニック号の最新映像が公開される。窓のステンドグラスや床のタイルも発見
1912年の処女航海で氷山に衝突し、1500人の命と共に水中へ没した悲劇の豪華客船タイタニック号。その船体は109年たった今も北大西洋の海底に沈んでいる。
このほど最新の潜水艇によって、3800メートルの海底に眠るタイタニック号の調査が行われた。カメラに映されたのは、美しいステンドグラスが収まっていた窓枠や、床のタイルといった当時の華やかさを偲ばせつつも、どこか物悲しい船の残骸だ。
・潜水艇によるタイタニック号の最新調査
潜水調査を行なったのは、海洋冒険家や科学者、映像の専門家などのチームを擁する(オーシャンゲート・エクスペディションズ(Oceangate Expeditions)社。
今回の試みは、NASAの協力を仰いで開発された次世代潜水艇「タイタン(Titan)」の第1回目となる潜水調査で、かつてステンドグラスが収まっていた窓枠や床のタイルといった船の残骸が撮影されている。
海底で発見されたステンドグラスが収まっていた窓枠 / image credit:(OceanGate
調査は今後も定期的に行われる予定で、4Kカメラあるいは最新型のソナーやレーザーといった技術でタイタニック号の3Dイメージを作成するためのデータが集められる。
Latest deep sea expedition to Titanic 12,000 feet below ocean surface shows new images of wreckage・腐食が進むタイタニック号
この調査の目的の1つに、「タイタニック号の腐食具合を記録すること」が掲げられている。
じつは今、海底で眠るタイタニック号の腐食が進んでいる。アメリカ海洋大気庁の調査では、あと40年以内に船体が崩壊してしまう可能性が濃厚であると推測されている。
皮肉にも、船の劣化に追い討ちをかけているのは、人間による調査だ。たとえば2001年に映画監督のジェームズ・キャメロン氏がタイタニック号の調査を行なっているが、そのときに利用された潜水艇が船体に衝突して、大きな損傷を与えてしまった。
さらに専門家に相談することもなく行われる私的な調査によって、沈没船やその周辺から考古学的に価値のある遺物が持ち去られてしまうことも問題視されている。
しかし一方で今行動しなければ、歴史的に貴重なタイタニック号の残骸は永遠に失われてしまう為、調査を進めるべきであるとする声もある。
Titanic Survey Expedition
2020年の時点でタイタニック号を引き揚げる権利を持っていたのは、RMSタイタニック社だ。当時、同社は船に搭載されていた無線通信機の回収を発表。しかし、そのためには水中ロボットで屋根を切り裂く必要があった。
それだけでなく、船の中にはまだ乗客の遺体が残されている可能性もあり、船を傷つけ、死者が眠る船内から遺物を回収するという行為は亡くなった人たちへの冒涜であると議論を呼んだ。
References:OceanGate sub makes its first dive to Titanic wreck site / written by hiroching / edited by parumo