北条義時の妹、そして妻となる”二人の阿波局”の存在ー大河ドラマ「鎌倉殿の13人」

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北条義時の妹、そして妻となる”二人の阿波局”の存在ー大河ドラマ「鎌倉殿の13人」

令和4年(2022年)に放送が予定されている大河ドラマ「鎌倉殿の13人」

偉大なるカリスマ・源頼朝(みなもとの よりとも)公亡き後、鎌倉幕府における権力抗争を描く群像劇は、三谷幸喜の脚本や豪華なキャスト陣などにより、早くも話題となっているようです。

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その一人に、主人公・北条義時(ほうじょう よしとき)の妹に阿波局(あわのつぼね)という女性がいます。彼女は頼朝公の異母弟である阿野全成(あの ぜんじょう)に嫁ぎ、鎌倉幕府や北条家を支える重要な役割を果たしました。

阿野全成。Wikipediaより(撮影:Musuketeer.3氏)

さて、阿波局と言うと実はもう一人おりまして、それがまた義時の妻だと言うからややこしいことこの上ありません。

紛らわしいから大河ドラマには登場させず、彼女の産んだ息子・北条泰時(やすとき)だけをしれっと登場させるのか、あるいは別の呼び方を設定するのか、こういうところに脚本家のセンスや工夫が表れて面白いですよね。

今回はこの北条義時の妹、そして妻となる二人の阿波局についてそれぞれ紹介したいと思います。

北条義時の妹・1人目の阿波局

生まれた年は不詳、阿野全成の妾(『吾妻鏡』による)となって嫡男・阿野時元(ときもと。生年不詳)を産みます。

正治元年(1199年)
頼朝公の死後、その遺徳を慕った≒遠回しに2代目将軍・源頼家(よりいえ)の暴政を批判した御家人・結城朝光(ゆうき ともみつ)に謀叛の疑いがかけられた際、逸早く情報を伝えて朝光を救いました。

建仁3年(1203年)
やがて北条家と頼家の争いが激化すると夫・阿野全成が誅殺され、阿波局も身柄を引き渡すよう要求してきますが、姉・北条政子(まさこ)らはこれを拒絶。頼家の後ろ盾となっていた比企能員(ひき よしかず)を滅ぼし、頼家を追放・暗殺します(諸説あり)。
その後は第3代将軍・源実朝(さねとも)に仕えてその乳母となり、父・北条時政(ときまさ)が牧の方(まきのかた。時政の継室)に誑かされて実朝を害そうとしていることを政子に伝え、その身柄を保護しました。

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建保7年(1219年)
実朝が公暁(くぎょう。頼家の遺児)に暗殺されると、それまで隠棲していた時元が第4代将軍の座を望んで挙兵したものの兵が集まらず、義時の命によって討ち取られてしまいます。

公暁に暗殺される実朝。月岡芳年「美談武者八景 鶴岡の暮雪」

(※『吾妻鏡』では謀叛としていますが、逆に義時らが討手を差し向けたため、やむなく自衛の兵を挙げたとする説もあります)

この時、阿波局は我が子・時元の粛清について抗議も弁護もしていませんが、政子や義時らが朝廷から親王殿下を将軍に迎えるべく要請していたことを知っていたので、そもそも我が子が将軍になることを考えて(望んで)はいなかったのでしょう。

嘉禄3年(1227年)
時元を喪って以降はこれと言った活動も見られず、そのまま亡くなります。この時、甥の泰時が30日間の喪に服したことを最後に、歴史の表舞台から姿を消したのでした。

北条義時の妻・2人目の阿波局

先ほども紹介した通り北条泰時の母に当たる人物ですが、その出自は不明。御家人・加地信実(かじ のぶざね)の娘に阿波局がおり、彼女ではないかと見られています。

北条義時にとって最初の妻と見られますが、身分が低かったためか正室としては扱われず、後に比企氏の美女・姫の前(ひめのまえ)に一目ぼれした義時は、そっちを正室に迎えました。

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執権の座を争った北条政村(左)と北条泰時(右)。その戦いは母たちの代理戦争でもあった?

建仁3年(1203年)に比企氏が滅亡すると、今度は伊賀の方(いがのかた)を継室に迎え、これが後に義時の後継者争い(伊賀氏の変。貞応3・1224年)を生み出すのですが、比企氏と言い伊賀氏と言い、義時にまつわる女性は何かとトラブルの火種となっている印象です。

結局、泰時が義時の跡目を継ぎましたが、阿波局は側室だったからか、あるいはそもそも控えめだったのか、他の女性たちのように当主の後ろ盾としてグイグイ出てくることもなく、静かに生涯をまっとうしたのでした。

終わりに

以上、北条義時の近くにいた2人の阿波局を紹介しましたが、妻の方はそんなにキャラクターが濃くないため、恐らく大河ドラマには登場させず、いつの間か息子・泰時がいたように描かれるものと予想しています。

(あえてストーリーに絡める必要性が薄い上、妻子がいながら他の女性にアプローチする姫の前の一件は、現代の価値観とも相容れにくいでしょうし)

彼女は「どっち」の阿波局か(イメージ)

それでも「阿波局が2人いた」ことを知っておくと、やがて北条泰時の母親が「阿波局」と知った時に「え!義時は自分の妹と子供を作ったの?」などと誤解することもなくなるでしょう。

何かと控えめだった(らしい)義時の妻の方の阿波局も、覚えておいて頂ければと思います。

※参考文献:
上横手雅敬『鎌倉時代 その光と影』吉川弘文館、2006年12月
永井晋『鎌倉幕府の転換点 『吾妻鏡』を読みなおす』日本放送出版協会、2000年12月
細川重男『執権 北条氏と鎌倉幕府』講談社学術文庫、2019年10月

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