なるほど…『徒然草』より、入念すぎた準備の結果、青春を棒に振った残念な若者 (2/3ページ)
「はいどぅ、はいどぅ……!」
もともと素質があったようで、息子はみるみる馬術が上達。自分の足腰くらいに乗りこなすレベルになったものの、こうなると面白くなり、もっと究めたくなるのが人の常。
「息子や、そろそろ修行を……」
「いいえ母上、まだ馬術を究めておりませぬ。はいよーっ!」
息子はますます馬術にのめり込み、ようやく満足したかと思ったら、今度はこんなことを思いつきます。
「そう言えば……説経や仏事の後に檀家より酒など勧められることもあるだろう。そうした宴席に招かれた時、宴会芸の一つも見せられないようでは興醒めだから、何か学ばねばならんな……」
そこで今度は早歌(はやうた、そうか)を習い始めました。早歌とはその名の通り早くテンポのよい節回しで歌を詠むもので、現代で言うJ-POPのはしりとも言える芸能。
これまた上達するとどんどん楽しくなってしまい、もっともっと究めようとする内に歳月は流れていきました。
「息子や……」
「はいはい、修行ですよね。修行……はぁ」
気づけばすっかり歳を食っており、また仏道に対する興味も雲散霧消。結局「乗馬と宴会芸の得意なおじさん」として生涯を終えたということです。