彼岸とはあの世であり極楽浄土。「お彼岸」の時期はいつ?「お盆」との違いは知ってる?
春と秋、お馴染みの「お彼岸」
お彼岸と言えば、皆さんは何を連想するでしょうか。俗に「暑さ寒さも彼岸まで」なとど言われており、この時期は季節の変わり目でもあります。
まず、春のお彼岸は、3月20日頃の「春分の日」を中心に、その前後3日間を含めた一週間を指します。そして秋のお彼岸は、9月23日頃の「秋分の日」を中心とした一週間。
2021年のお彼岸の期間はこちら。
春のお彼岸
3月17日(水):彼岸入り
3月20日(土):春分の日(中日)
3月23日(火):彼岸明け
秋のお彼岸
9月20日(月):彼岸入り
9月23日(木):秋分の日(中日)
9月26日(日):彼岸明け
春秋いずれも、冬や夏の厳しい気候が和らいだあたりでお墓参りに行ったりしますね。
彼岸花(ヒガンバナ)という美しい花がありますが、この名は、「秋のお彼岸ごろに咲く」という意味から付けられました。
ヒガンバナの異名、多すぎ?その数1,000を超える「ヒガンバナ」の異名を紹介!ちなみにですが、お彼岸の墓参りなどで定番の「ぼたもち」は、材料や作り方は春も秋も同じですが、春は「ぼたもち(牡丹餅)」秋は「おはぎ(お萩)」と呼び名が変わることがあります。
秋の「おはぎ」、春の「ぼたもち」その違いって何? 「彼岸」とはあの世であり極楽浄土でもあるさて、私たちにとっても馴染み深い「お彼岸」ですが、これには宗教的な謂れがあります。
まず「彼岸」という言葉ですが、これには「向こう岸」などの意味と同時に、仏教で言うところの煩悩を脱した涅槃の境地――つまり仏様になった境地という意味もあります。
こうした意味が合わさって、「彼岸」という言葉はこの世のものならざる「あっちの世界」、つまりあの世のイメージも含むようになりました。これに対して「こっちの世界」、即ちこの世のことは「此岸(しがん)」と言います。
もう少し掘り下げましょう。春分の日と秋分の日は、いずれも一年のうちで昼と夜の長さが同じになる日です。日が昇り沈んでいく東西のバランスと、昼と夜のバランスがぴったり均衡になるこの時期は、あの世とこの世が最も通じやすくなると考えられたのです。
ですので、亡くなったご先祖様も、お彼岸になるとあの世からこの世にやってきます。それで私たちもお墓参りに出向く風習ができあがったのです。
そういえばお彼岸には、西に沈んでいく太陽を拝むとご利益があると言われています。これは仏教でいう極楽浄土、つまりあの世は西にあるとされているからです(西方浄土)。こんなところにも仏教の影響を見ることができます。
死後の世界から先祖の霊がやってくる……などと聞くと不気味な感じもしますが、お彼岸の行事は仏教の影響が強いことから、あの世にいる霊は、むしろ私たちから見ればうらやましくなる存在だと捉えられています。
なぜなら仏教的な見方では、この世は苦しみや悲しみに満ちているからです。仏様としてあの世へ行けた霊は、こうした苦しみ悲しみから解き放たれています。
こんな風に「あの世」に思いを馳せるのが、お彼岸という時期なんですね。
ちなみに「お彼岸」の正式名称は「彼岸会(ひがんえ)」といいますが、平安時代にはこの彼岸会が朝廷でも行われていたようです。
「お彼岸」と「お盆」の違いは?さて、ちょっと引っかかるのが、「お墓参り」という共通点はあるものの「お彼岸」と「お盆」はどう違うのか? という点です。
理解を深めるために、この点をご説明しておきましょう。
いずれも、ご先祖様があの世からこの世へやってきて、それに対してお墓参りでお迎えする点は同じです。
一番の大きな違いはその起源です。
大まかに見てお彼岸は日本独自の行事であるのに対し、お盆はもう少し複雑で、日本独自の祖先崇拝や農耕儀礼に仏教の盂蘭盆会(うらぼんえ)、さらに儒教思想などが交じり合ってできた行事です。
よって、お盆とお彼岸は作法が全く違います。お彼岸は決まった作法はないのに対し、お盆はご存じの通り迎え火を焚いてお経をあげ、お供え物を用意して、送り火を焚いて、さらに提灯を下げたりキュウリとナスを動物に見立てたものを飾ったり……などなど、やることがいっぱいあります(今はそこまで厳密にやる家も少ないかも知れませんが)。
元ネタは逆さ吊りの刑?古代インドから来た「お盆」と言う名の由来とお盆の起源 地獄、死霊…。ホントはちょっと怖い「お盆」や「盆踊り」の起源を探るただしお彼岸にはひとつだけ、「しきたり」のようなものがあります。
あの世からやってくるご先祖様、つまり仏様をお迎えするのと同時に、自分自身も仏教徒として修業をしなければならないのです。
おそらく、お彼岸の由来などはなんとなく知っていても、このことは知らない人も多いのではないでしょうか。
この修行の内容は「六波羅蜜」と呼ばれるもので、布施・持戒・忍辱・精進・禅定・智慧の六つ。長くなるので詳細は省略しますが、あの世とこの世である彼岸と此岸がもっとも通じやすくなる時期にこの六つを実践することで、その人は極楽浄土に近づくといわれています。
こうして見ると、お彼岸というのはつくづく仏教色の強い行事ですね。
私などは、お彼岸にお墓参りに行く習慣もなく、スーパーマーケットで「ぼたもち」「おはぎ」が売られているのを見て、そういえばお彼岸だったな~と思い出すのが関の山です。
ほんの少しでも、文化の背景を振り返るような時間を作りたいものですね。
参考資料
・火田博文『本当は怖い日本のしきたり』(彩図社・2019年)
・六波羅蜜寺「六波羅蜜とは」
・カトトピ「期間や目的が違う? お盆とお彼岸の違いを解説」
日本の文化と「今」をつなぐ - Japaaan