学生の中途退学は予測可能か? 大学教授が論じる「学生との向き合い方」 (2/2ページ)
●失速型
続いては「失速型」だ。「典型的失速型」は何らかのきっかけで突然学習意欲がなくなり、それが習得単位数やGPA(Grade Point Average)の急速な低下にあらわれる。前述の「福祉対応必要型」はこの類型にも含まれる。学習上のハンデがもとで専門教育についていくのがより困難になることが考えられるからだ。一方、習得単位もGPAも申し分ないのに、突然除退となる「隠れ不満型」も失速型に分類される。これは、所属している大学に対する教育水準に不満を持つことから顕在化すると考えられる。
●突発型
最後の「突発型」は、家庭の経済状況の急変から除退を余儀なくされるもので、「貧困型」が典型だ。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、このタイプの除退が増えたと思われがちだが、実際はそうなっていないと中村氏。2020年4月から12月の文科省の調査を見ても、前年同時期に比べて除退者は減っているという。
■学生の除退予測は可能か?大学の運営上重要なことは、こうした除退者たちが出ることを事前に予測することは可能かどうかということである。
中村氏は、先行研究から「3年生4月時点で除退となる学生の特徴は入学直後から顕在化する」(本書p.143より)という見通しを立て、彼らへの対策を適正に講じれば、除退防止の有効な手段になるのではないかと考える。
では、どのタイミングで除退阻止に向けて動けばいいのか。
先行研究では、講義への出席状況や初年次段階の成績で学習態度が把握される。だが、成績が明らかになったタイミングはもちろんのこと、講義を休みがちになったことに気づいたタイミングで既に手遅れだろう。現場にとって重要なことは、「逃げ出す前」の段階で発するシグナルが何かを見出すことだ。
本書では、レスポンス「シートに書かれた文字情報が重要なシグナルである」(本書p.143より)という仮説を立てた上で、ある講義の受講登録者を対象にレスポンスシートで書かれた自己評価の文章をデータ化。その語彙数と内容が、学生の除退予測に利用可能かを検証している。
教育者向けに書かれている一冊ではあるが、自身が学生であったり、学生の子を持つ親であれば気になる内容であるはず。さらに、レスポンスシートの採点表であるルーブリックを使うことの効果、ある講義を起点にした学生の履修行動の追跡調査、アクティブラーニングの実践など、中村氏の教育現場の様子もうかがうことができる。
教員はどう学生と向き合えばいいのか。そのヒントを提示してくれる一冊だ。
(新刊JP編集部)