虫の声は日本人にしか聞こえない!?日本人と世界の人々の虫の声の聞こえ方について【前編】

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虫の声は日本人にしか聞こえない!?日本人と世界の人々の虫の声の聞こえ方について【前編】

皆さんは「夏の終り」ってどんなことで感じますか?

筆者の場合は例えば “カナカナカナ・・・”というヒグラシ(秋蜩)という蝉の鳴き声だったり、“リリリリリリリリリ”というコウロギの虫の声が聞こえてくると、『ああ、夏がもう終わってしまう』と感傷的な気分になります。

ところが、外国人には“虫の声”は聞こえないという話を聞きました。聞こえない?聞こえないってどういうこと?

今回はそのことについて調べてみましたのでご紹介します。

外国人に虫の声が聞こえないと言われる理由

東京医科歯科大学の角田忠信教授の説が代表的なので、それをもとにご紹介していきます。

角田教授はキューバで国際学会に参加した際、会場に響く激しい「虫の声」に気づき、周囲の人に何という虫かと尋ねてみたが、だれも何も聞こえないというのです。聞こえない?教授には「蝉しぐれ」のように聞こえているというのに。

■言語脳と音楽脳

そこで角田教授は研究した結果、次のような答えが導き出されました。

人間の脳は右脳と左脳とに分かれており、右脳は“音楽脳”とも呼ばれ、主に音楽や機械音・雑音等を処理します。

それに対して左脳は“言語脳”と呼ばれ、人間の話を理解するなど、論理的知的な処理をします。ここまでは日本人も西洋人も一緒です。

それでは“虫の音をどちらの脳で聴くか”ということが問題となります。

角田教授の実験によって西洋人は虫の音を右脳つまり“音楽脳”で聞いており、日本人とポリネシア人は虫の音を左脳つまり“言語脳”で聞いていることがあきらかになったのです。

日本人は虫の音を「虫の声」と言語のように聞いているということになります。西洋人は虫の音をそのまま「音」として捉えているようです。

これは使用している言語の特性の違いによって生じていると考えられるようです。

オノマトペとの関係

川の流れ1

さまざまな状態や動きなどを音で表現する言葉を英語では“onomatopoeia”(オノマトペ)と言います。

たとえば実際に音がする擬音語の日本語のオノマトペは「犬は“ワンワン”と吠える」「咳を“コンコン”する」というように表現します。

実際には音の出ないものを言葉で言い表した擬態語の日本語のオノマトペは「白い雲が“フワフワ”浮かんでいる」「胸が“ワクワク”する」などが挙げられます。

セミなどの虫のさまざまな鳴き声を、日本では文字通り「鳴き声」と捉えますが、海外では虫の鳴き声は「雑音」として捉えられることが多いようです。

そのため、日本では「ミーンミーン」「カナカナカナ」といったセミの鳴き声を表す擬声語は、英語にはありません。

セミの鳴き声は英語で“cicada noise”(セミの音)や“buzz of a cicada”(セミの鳴き声)と言い、“noise”(雑音)や“buzz”(羽音)と表現されます。

日本語のオノマトペは外国語の3~5倍存在すると言われていますが、虫の声を認識することが少ない英語と比べるとそれはあたり前のことかもしれません。

つまり日本人は虫の音を言語脳で聞き取るので、自然とそこに意味や感情、情緒などを自然に付加するのではないでしょうか。

中国も「虫の音」を楽しんでいたが、それ以上に熱狂したもの 闘蟋蟀に興じる人(1903年・中国) ウィキペディアより

闘蟋蟀に興じる人(1903年・中国) ウィキペディアより

中国でも唐の時代から虫の音を楽しむ文化が宮廷を中心に発展しました。それが日本に伝来したものと思われます。

中国では一般市民でも虫を小さな容器にいれて、外を歩きながらふとその容器を耳にあてて虫の声を楽しむという文化もあり、これは中国独特のものです。

他にコオロギを闘わせる「闘蟋(とうしつ)」という伝統的な遊びがあります。どちらかというとこちらの方が盛んかもしれません。不思議なことにこれに興じるのは男性です。

この闘蟋はコオロギを闘わせ、ひと秋をかけて虫王を決める遊びです。今でも庶民の娯楽(賭博)として盛んです。お金を賭けることは禁止されていますが、飼い主たちはコオロギの育成に金と時間と知識のすべてを注ぎ、熱中のあまり家屋敷を失ったり、過去には国を滅ぼした者すらいたということです。

しかし、現代でも「虫の声」を発する虫を売る商売は中国で存在しており、中国にも虫の声を楽しむ文化はあるということになります。

つまり日本と中国・ポリネシア人には「虫の声」は聞こえますが、それ以外の国の人々は虫の音は聞こえるが、それが単なる「音」や「雑音」に聞こえてしまうということなのです。世界中でほぼ中国と日本だけというのもなんだか不思議ですね。

次回、【後編】に続きます。

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