阪神・矢野監督が退任表明した本当の理由は 井上ヘッドらには事前に相談? 後任探しは苦戦か
虎のキャンプは「波乱のスタート」となった。1月31日、翌2月1日から始まる春季キャンプに先駆け、阪神は恒例の前日ミーティングを開いた。どの球団もそうだが、前日ミーティングの目的は選手を発奮させること。監督以下首脳陣の方針を伝えるためだが、矢野燿大監督は違った。
阪神・矢野監督が佐藤を説教「お前にとってもよくない」 物議を醸した怠慢プレーの裏側明かす、監督側の問題の指摘も
「え~と、あともう一個は…」
関係者によれば、方針などを約20分語った後、矢野監督はそんな風に切り出したという。
「今シーズンを以って、(監督を)退任しようと思っているので」
2月1日はプロ野球界の元旦に例えられてきた。公式日程が始まる前からも、それも前日ミーティングで退任表明がされるのは、異例中の異例だ。
取材する側の様子を伝えると、そのミーティング後に「オンラインでの監督会見がある」と知らされていた。
すでに“予定稿”を書き上げていたメディアも多く、「監督のコメントを加えるだけ」というノホホンとした雰囲気だった。しかし、事態は一変。オンライン会見が始まる前に、退任表明の情報が飛び込んできた。
「来年はもう、監督という立場でここに来ていることはないんだなって気持ちを持って、挑戦していきたい」
異例の退任表明の理由を、そう語っていた。
しかし、こんな指摘も聞かれた。
「フロントスタッフは、ミーティングで退任表明がされることを知らされていなかったようです。選手、ファンの混乱は必至。今後、矢野監督の言動には全て『今季限り』『集大成』などの言葉が重ねられます。試合で活躍した選手も『矢野監督のために?』という質問がされるでしょう。選手もキャンプに集中できないかもしれません。そうした混乱を避けるため、ミーティング後のオンライン会見を中止することもできたはず。ミーティング会場にはメディアは入れなかったので、箝口令を敷くことだってできたのに…」(球界関係者)
昨年9月、球団は矢野監督に続投を要請した。同年で終了する3年契約が「1年延長」となったが、当時は、
「球団が続投と言っても、本社グループが『ノー』と言えばそれまで。最終決定ではないかも」(在阪記者)
と、前半戦の独走状態が崩されたチーム事情を重ねて、矢野監督を心配する声も多く聞かれた。
「井上一樹ヘッドコーチなど、一部には進退のことを相談していたようです」(前出・球界関係者)
阪神指揮官はメディア露出度も高い。不甲斐ない負け方をすれば、大バッシングを浴びることになる。こうした重圧がこのタイミングでの表明につながったのだろうか。
今回の退任表明だが、「再々延長はしない」と、先駆けてフロントに通達したとも解釈できる。優勝への決意、伝統球団を指揮する重圧。このタイミングで進退問題を打ち明けた理由も、いずれ矢野監督から語られるはずだろう。
球団はペナントレースと並行して、次期監督の人選も進めなければならなくなった。選手は「矢野監督のためにも」と発奮してくれるはずだが、いきなり、緊張感でいっぱいになってしまった。重苦しい雰囲気がちょっとに気になる。(スポーツライター・飯山満)