夢のヤセ薬が誕生か?体重調節ホルモン「レプチン」の働きを阻害する酵素をブロックすることに成功
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体重を減らすのはなかなかやっかいだ。食事制限や運動などを続け、やっと痩せたと思ってもリバウンドしまったりする。
これまで、「脂肪細胞」によって作り出されるホルモン「レプチン」が、脳に作用して、食欲と代謝の調節を行い、肥満の抑制や体重増加の制御の役割を果たしてくれることはわかっていた。
ところが、太りすぎた人の脳はレプチンに鈍感になり、その効果が現れなくなってしまうのだ。
今回、米ミシガン大学の研究者らは、なぜ脳がレプチンに対して鈍感になってしまうのかを解明し、ある化合物を使うことで、レプチン抵抗性を防ぐ方法を発見したと、『Nature Metabolism』(2022年1月17日付)で報告している。
・レプチン抵抗性と関連のある酵素を発見
レプチンは脂肪細胞から分泌されるホルモンで、脳内の弓状核(きゅうじょうかく)という摂食中枢に作用して、食欲をコントロールする作用がある。
レプチンは脂肪が増えるにしたがい放出量が増えるが、肥満の人の多くは、レプチンが効きにくくなる「レプチン抵抗性」が起こり、食欲を抑えられなくなる。
レプチン抵抗性を解消するメカニズムが解明できれば、効果的な治療法につながる可能性があると期待されていた。
アメリカ、ミシガン大学の研究者らは、レプチン抵抗性が起きるのは、「ヒストン脱アセチル化酵素6(HDAC6)」の働きが関係することを突き止めた。
ならばこの酵素が機能しないようにすればいい。
そこで研究者らは、HDAC6阻害薬を見つけるべく、様々な実験を繰り返した結果、ある有機化合物がこの酵素をブロックすることを発見した。
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脂肪細胞 photo by iStock
・マウス実験で、脂肪だけを落とし健康に体重を落とすことに成功
その効果を試すため、太ったマウスにHDAC6阻害薬を投与すると、数週間で体重が4分の1も減少したという。
しかもただ痩せただけではない。キレイに痩せたのだ。食事制限によるダイエットの場合、体重は落ちても筋肉までが衰えがちだ。
ところが今回の方法では、筋肉はそのままで、脂肪だけが落ちたのだ。体重が軽くなったのは、脂肪質量が50%も減ったことによるものだった。
それだけでなく、マウスの代謝機能はより健康的になった。食事制限によるダイエットでありがちな、エネルギー消費量の低下はなかった。
さらに肝臓と耐糖能(血糖値が高くなったとき、正常値に戻す力)も改善している。つまり糖尿病になりにくい体になったのだ。
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photo by iStock
・レプチンがある場合にのみ有効
ちなみに、痩せているマウスや、遺伝子操作でレプチンを作れなくしたマウスでは、体重は減らなかったという。
このことは、HDAC6阻害薬で体重を落とすには、まず体の中にレプチンがなければならないことを示している。
またHDAC6の働きで脳がレプチンに鈍感になり、痩せにくくなるという裏付けでもある。・人類にとっての夢のやせ薬となるか?
マウスでは心強い結果だが、人間にも使える夢のダイエット薬の登場はもう少し先になるようだ。
人体には効かない可能性があるし、何より安全性をきちんと確かめなければならない。と言うのも、強力なHDAC6阻害薬で分子が分解すると、毒性を発揮する恐れがあるのだ。
安全なダイエット薬を開発するために、研究グループは、同じようなダイエット効果がありながら、毒性はないHDAC6阻害薬の開発を進めているとのことだ。
References:Obesity in mice lowered by increasing effects of key weight-regulating hormone | University of Michigan News / written by hiroching / edited by parumo
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