世界最小の国「バチカン市国」元大使が語る秘密のベールの内側 (2/2ページ)
また、世界平和や核のない世界、貧困撲滅、人権の尊重などを掲げるバチカンは、世界の「モラルリーダー」としての説得力も兼ね備える。これは主張の背景にあるものが「国益の追求」ではなく「宗教」であるため、国や地域、個人を問わず耳を傾けやすいという側面があるのだろう。
■バチカンがまとう「神秘のベール」の功罪一方で、バチカンにも問題や課題はある。
国家としてのバチカンが抱える問題の一つが、内部の不透明性だ。たとえばバチカンの財政収支は現在公表されていない。最後に発表されたのは2015年で、この時は1240万ユーロ(約16億円)の赤字。当時はバチカン教皇庁が財政改革を推進していたため、会計事務所と契約したものの半年で契約解除となった。これは財政改革に反対する教皇庁内部の抵抗の結果だとされる。以降財政収支は発表されていない。
国家である以上ある程度の透明性は確保されるべきなのだろうが、今のところバチカンの財政は「神秘のベール」に包まれている。宗教の神秘性ということで、ある程度の不透明性を許容するかどうかは考えがわかれるところだが、隠ぺいの文化があまりにも高じると、たびたび世界的な問題になっている「聖職者による性的虐待問題のような状況を作り出し、信徒を失うことになる」と中村氏は指摘している。
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バチカンの内部とそこでの生活、そして日本との交流など、中村氏がつづる大使時代の経験は、日本人の多くは見たことも聞いたこともないものだろう。
閉ざされた秘密の場所をのぞくような一冊。知的好奇心を大いにくすぐられるはずだ。
(新刊JP編集部)