イギリスが古代ローマ帝国に支配されていた時代の木彫りの像が排水溝から発見される
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考古学者が極めて珍しい木彫りの小立像を発掘した。古代ローマ帝国がブリテン島を支配していたローマンブリテン時代初期のものと思われ、鉄道建設計画に先立つ発掘調査で、ロンドン北部の排水溝の中から発見された。
像の状態はかなり悪いが、どうやらローマスタイルのチュニックを着た男性を表わしているようだ。
溝の中からは陶器のかけらも見つかっていて、これも、クラウディウス帝がイギリスの大部分を支配していた時代の紀元43年から70年の間にさかのぼるものであることがわかった。
ちなみにユリウス・カエサルは、紀元前54年と55年にイギリスに侵攻したが、永久支配できていない。
・宗教的な供物として意図的に置かれた可能性
考古学者たちによると、この小立像は宗教的な供物として、意図的に溝の中に置かれた可能性があるという。沼地や湿地帯に物や人間の生贄を捧げる行為は、ローマ征服以前の北ヨーロッパでは一般的なことだった。
「髪の毛や服などの細かい部分まで木に彫り込まれて、描かれた人物に生命が吹きこまれているのです」政府のHigh Speed 2(HS2)鉄道プロジェクトにかかわる考古学者、イアン・ウィリアムソンは言う。
HS2は、将来的にロンドンとマンチェスターをつなぐ、480キロ以上にわたる鉄道プロジェクトだ。
法律により、鉄道が通るルートの土地はすべて、工事に入る前にまず考古学者によって調査が行われなくてはならない。このプロジェクトが、新たな考古学的発見の大きな源になっている。
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Very rare Roman wooden figure discovered during HS2 work in Buckinghamshire・紀元1世紀頃の小立像
この小立像は、昨年7月、バッキンガムシア州トワイフォードの村近くで発見された。民間企業「Infra Archaeology」の考古学者が、Fusion JVのためにスリー・ブリッジミルという湿地近くで作業していたところ、泥の詰まったローマ時代の溝の中に腐った木片らしきものを発見したという。
その後の発掘調査により、一本の木から切り出された、高さ67センチ、横18センチの人型像であることが判明した。
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木の小立像は崩壊することなく保存されていた。これほど長い間、木が腐ることなく残っているのは珍しい。 / image credit:HS2
「イギリスのローマ時代に作られたこうした木製の像が、現代まで残っていることが極めて珍しいのはもちろんですが、この場所に関する新たな疑問も浮かんできます」ウィリアムソンは言う。
「この木彫り像は誰なのでしょう? なんのためのものなのでしょうか? 紀元1世紀のバッキンガムシアで生きていた人たちにとって、どうしてこれが重要だったのでしょうか?」
もっとも驚くのは、小立像が腐らずにずっと残っていたことだ。木製のものはたいてい、酸素にさらされると、すぐに腐ってしまう。
しかし、古代の遺物の中には、嫌気性(酸素がない状態)堆積物の層の下に埋まっていたために、腐らずにずっと残るものもある。この小立像のケースも、溝の泥の中に埋まっていたために形が残ったと思われる。
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HS2
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小立像の腕は、肘から先がなく、足も欠けているが、その年代を考えると全体的には良好な状態といえる。
帽子や髪形がはっきりとわかるなど、驚くほど細かなところまで彫り込まれている。頭はわずかに左に回転し、上着の前は腰のところでギャザーが寄っているように見え、丈は膝上まであるようだ。脚とふくらはぎの筋肉もはっきりわかる。
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小立像を調査した政府系遺産管理組織ヒストリック・イングランドは、驚くべき発見と言っている。
「彫刻の質は見事としか言いようがありません。この時代の有機物が残ることはまれなので、とても興奮しています」ヒストリック・イングランドの科学シニアアドバイザー、ジム・ウィリアムスは言う。
「この発見は、この時代にほかにも木や植物、動物をモチーフにした美術品や彫刻が作られていたかもしれないことを想像させてくれます」
現在、小立像は保存され、さらに調査が行われることになっている。
溝の中からは、小立像のものらしき、割れた小さな木片も見つかっていて、考古学者たちは、この木片を使って、木材の正確な放射性炭素年代を特定し、安定同位体分析で木の産地を明らかにしたいと考えている。
References:Rare Roman wooden figure uncovered by HS2 archaeologists in Buckinghamshire / written by konohazuku / edited by parumo
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